なぜ、あなたの膝は痛むのか?

その答えは、膝にはないかもしれません。身体はすべて繋がっている「運動の鎖」。キネティックチェーンの概念が、痛みの真の原因を解き明かします。

理論の誕生:ヤンダの「機能的革命」

かつて痛みの原因は骨や関節という「構造」にあると考えられていました。しかし、ウラジミール・ヤンダは神経と筋肉の「機能(モーターコントロール)」に注目。彼は筋肉が「緊張しやすい筋肉」と「弱化しやすい筋肉」に分かれ、その不均衡が特定の姿勢異常を生み出すことを発見しました。

上部交叉性症候群(猫背)

緊張 (胸/首後)

緊張 (背中)

弱化 (首前)

弱化 (背中下部)

下部交叉性症候群(反り腰)

緊張 (腰)

緊張 (股関節前)

弱化 (腹筋)

弱化 (お尻)

理論の発展:グレイ・クックの評価システム

ヤンダの哲学は、グレイ・クックによって「SFMA(選択的機能動作評価)」という体系的な評価システムへと昇華しました。SFMAは全身の動作を評価し、痛みの原因が「可動域の制限」なのか「モーターコントロールの問題」なのかを鑑別します。これにより、痛みの部位から離れた場所にある根本原因を探ることが可能になりました。

1. 痛みのある動作の特定

2. SFMAによる全身動作評価

原因はどちらか?

可動域の制限

関節が硬く、動かない

運動制御の問題

動かせるが、うまく使えない

現代科学による証明

キネティックチェーンは、もはや単なる理論ではありません。三次元動作解析や筋電図などの現代科学は、その正しさを客観的なデータで裏付けています。ランナー膝の原因が股関節にあることや、慢性腰痛患者のインナーマッスルの反応の遅れなどが科学的に立証されています。

ランナー膝:痛みの場所 vs 真の原因

慢性腰痛:インナーマッスルの反応速度

インタラクティブ体験:あなたの身体の繋がり

下の図の身体の部位をクリックしてみてください。選択した部位(黄色)と、関連する可能性が高い原因部位(赤色)がハイライトされます。これは、キネティックチェーンの「部位間の相互依存性」を視覚的に体験するためのものです。