実はよくある!子どもの肘内障【ママ・保育士さん向け対処法】

手が動かない肘内障

大切な予防のお話から

お子様の手を引っ張ると肘が抜けることをご存知ですか?

特に、手のひらを上に向けた状態(医学用語で「回内位」といいます)で手を引っ張ると、肘内障を引き起こす可能性が高くなります。よくあるシーンをご紹介します

  • 道路で急に飛び出しそうになった時
  • 公園の遊具から降りる時の手助け
  • 段差を上る時のお手伝い

このような何気ない日常の動作で、実は肘内障が起こりやすいのです。

予防が大切!正しい手の引き方

お子様の手を取る必要がある時は

  • 手のひらを横か下に向けた状態で
  • 肘や脇の下を支える
  • 急な動きを避ける

このような注意を心がけることで、肘内障の多くは予防できます。

肘内障の基礎知識

もし予防していても起こってしまった場合のために、肘内障について詳しく知っておきましょう。

肘内障(医学用語:橈骨頭亜脱臼)は、腕の骨(橈骨)の一部が、一時的に本来の位置からずれてしまう状態です。全小児の外傷の約20%を占める一般的な症状であり、特に1〜4歳の子どもに多く見られます。

子どもの肘関節は大人と異なり、靭帯が柔らかく伸びやすく、関節を支える筋肉も未発達です。また、骨の形状が完成していないため、ちょっとした力で肘内障が起こりやすい状態にあります。

年齢と性別による発症の特徴

年齢発症率特徴
1〜2歳40%最も発症しやすい年齢。歩き始めで転倒も多い
3〜4歳40%活発な遊びの増加により発症リスクが高い
5〜6歳15%筋肉の発達により発症リスクが低下
7歳以上5%靭帯や筋肉の成長により、めったに発症しない

また、女児の方がやや多い傾向にあり、全体の55%を女児が占めています。

具体的な予防法

日常生活での注意ポイント

シーン危険な動作安全な対応
道路を歩く時手をつないで引っ張る無理に引っ張らない
遊具から降りる時手を引っ張って助ける脇の下を支える
転びそうな時咄嗟に手を引く体全体を支える

症状と診断

典型的な症状

肘内障を発症すると、子どもは突然泣き出し、腕をだらんと下げたまま動かそうとしなくなります。手のひらを上に向けることができなくなり(医学用語:回内制限)、肘を曲げることも嫌がります。

診断の特徴

肘内障の診断において、レントゲン検査では異常が見られないことが多いのが特徴です。熟練した医療従事者による触診が、最も確実な診断方法となります。

治療の選択肢

肘内障の治療には、主に以下のような選択肢があります

医療機関による治療の比較

治療機関特徴診断方法治療時間
整形外科・レントゲン検査が一般的
・医師による診察
画像診断と触診比較的短時間
接骨院(柔道整復師)・丁寧な触診による診断
・手技による治療
問診、触診じっくりと時間をかける

どちらの選択肢も、専門的な知識と経験を持つ医療従事者による適切な処置が重要です。

柔道整復師による治療

柔道整復師は、関節の解剖学的知識と手技による精密な診断能力を持っています。肘内障の治療においては、適切な力加減での整復技術が特に重要となります。

整復の実際

整復の施術は、お子様の緊張をほぐすところから始まります。柔道整復師は、豊富な経験に基づき、お子様の年齢や体格に合わせて最適な力加減で施術を行います。ほとんどの場合、施術はほんの一瞬で終わり、多くの子どもはその場で泣き止み、すぐに腕を動かし始めます

治療後の変化

整復が成功すると、劇的な変化が見られます。泣いていた子どもが突然泣き止み、まるで何事もなかったかのように腕を動かし始めます。この瞬間は、保護者の方にとっても、施術者にとっても、大きな喜びとなります。

保育現場での対応

保育現場では、肘内障の予防と適切な対応が特に重要です。

日常的な予防策

保育活動では、子どもたちの遊び方に注意を払いつつ、以下のような予防策を講じることが効果的です

  • 手をつないで歩く際は、急な動きを避ける
  • 遊具での遊び方を丁寧に指導する
  • 子ども同士の関わり方にも目を配る

発症時の対応手順

  1. まず落ち着いて症状を確認する
  2. 無理に腕を動かさせない
  3. 保護者への連絡と医療機関の受診を検討

予防と再発防止

日常生活での注意点

正しい抱っこの方法を知ることが、予防の第一歩です。両腕をバランスよく支え、急な動きを避けることが大切です。また、遊び方を工夫し、腕を引っ張るような遊びは控えめにしましょう。

再発しやすい子どもへの対応

体質的に再発しやすい子どももいます。そのような場合は、日常的な筋力強化の遊びを取り入れることで、徐々に改善が期待できます。

よくある質問と誤解

Q
治療は痛いですか?
A

熟練した施術者による整復は、ほんの一瞬で終わります。多くの子どもは、整復の瞬間に泣き止み、すぐに笑顔で腕を動かし始めます。

Q
レントゲンは必要ないのですか?
A

肘内障の診断には、専門家による触診が最も有効です。レントゲンでは異常が映らないことが多いため、まずは専門家の診察をお勧めします。脱臼に分類されるため継続的に治療をする場合はレントゲンと医師の指示が必要ですが、一度で治る肘内障はレントゲンを取らずに終わることがおおいです。

Q
将来的に影響はありませんか?
A

適切な処置を受ければ、後遺症が残ることはほとんどありません。前半にも紹介しましたが子どもの頃の構造上起こる脱臼で大人になると抜けなくなります。

まとめ

肘内障は、決して珍しい症状ではありません。適切な診断と処置さえ受ければ、お子様はすぐに笑顔を取り戻すことができます。症状に気づいたら、落ち着いて専門家の診察を受けることをお勧めします。