【専門家が全解説】接骨院で「白紙の用紙にサイン」を求められたら?

接骨院で書類にサインを求められ、戸惑う患者様のイラストと、「【プロが全解説】接骨院で求められる“謎のサイン”の正体」というタイトルが書かれた、受領委任制度の解説記事のアイキャッチ画像。

接骨院の窓口で、日付や部位が空欄の用紙にサインを求められ、「これは一体何だろう?」と不思議に思ったことはありませんか?

ご安心ください。それは、あなたの窓口でのご負担を最小限に抑えるための、国が定めた「受領委任(じゅりょういにん)」という非常に大切な手続きです。

この記事では、なぜ、多くの誠実な接骨院がこの手続きを行っているのか、その「仕組み」「理由」、そして、患者様ご自身が持つ「権利」について、専門家として、分かりやすく、そして正直に、すべてお話しします。

この知識は、あなたと施術者との信頼関係を、より強く、確かなものにしてくれるはずです。


なぜ、窓口で安く治療が受けられるのか?

なぜ、接骨院では保険証を提示するだけで、窓口での支払いが数百円程度で済むのでしょうか。
それは、私たちが「受領委任制度」という仕組みを利用しているからです。

これは、一言でいうと「保険請求の面倒な手続きを、私たちがあなたに代わって(委任されて)行いますよ」という制度です。
本来なら、あなたが一度治療費の全額を支払い、その後ご自身で健康保険組合に申請して7割分を返してもらう、という非常に手間のかかる手続きが必要です。
この制度があるおかげで、あなたは窓口で自己負担分(1〜3割)を支払うだけで、すぐに治療を受けることができるのです。

【ポイント】

なぜ窓口負担が少ないの?

  • 接骨院が、患者様の代わりに、面倒な保険請求手続きを代行しているから(受領委任制度)。
  • そのため、患者様は窓口で自己負担分(1〜3割)を支払うだけで、治療が受けられる。

ではなぜ、病院ではサインが不要なのか?

ここで、多くの方が最も疑問に思う点にお答えします。

でも、病院の会計でも、サインなんてしないじゃないか?

その通りです。そして、この違いこそが、「受領委任」という制度の本質を理解する上で、最も重要なポイントなのです。

  1. 病院(保険医療機関)の場合
    病院が、患者様に代わって保険請求を行うことは、法律によって定められた、当然の仕組みです。そのため、患者様からの個別の「委任」は、そもそも必要ありません。
  2. 接骨院(柔道整復師)の場合
    一方、私たち接骨院が保険請求を行うことは、法律で定められた当然の権利ではなく、あくまで「本来は患者様自身が行うべき手続きを、特例的に代行することを、保険者から許可されている」という立場にあります。

だからこそ、その“特例”を適用するためには、「私(患者)は、なかの接骨院に、私の代わりに保険請求を行う権限を、確かに委任します」という、患者様ご自身の、明確な意思表示が、法的に絶対に必要となるのです。

【結論】あのサインの、本当の意味

つまり、あなたが毎月署名しているあの用紙は、単なる受付票ではありません。
それは、「面倒な保険請求手続き、代わりにやっておいてくださいね!」という、あなたから私たちへの、信頼の証でもある“委任状”なのです。


施術後のサインは「未来への信頼」を託す、白紙の委任状

そして、皆さんが施術後にサインをされている用紙が、この「委任状」にあたります。

ここで、正直にお話ししなければならないことがあります。
この制度は、その仕組み上、すべてが「白紙委任」です。

皆さんがサインをする時点では、まだその月の最終的な施術日数や内容は確定していません。つまり、あなたがしているサインは、「これから行われる施術と、その請求手続きの一切を、この先生を信頼してお願いします」という、未来に対する白紙の委任状なのです。
これは、患者さんと私たち施術者の間に、強い「信頼関係」がなければ成り立たない、性善説に基づいた非常に日本的な制度と言えるかもしれません。


「信頼」を支えるための、公的なチェック機能

「それって、もし悪い先生だったら不正されるんじゃないの?」
もちろん、そう思われるのは当然です。

だからこそ、その信頼関係が崩れないように、ちゃんと二重、三重のチェック機能も用意されています。

チェック機能①

医療費のお知らせ(利用実績)
最も確実なのが、定期的にご自宅に届く「医療費のお知らせ」です。ここに、あなたがいつ、どの医療機関で、いくら治療を受けたかが明記されています。もし、記載された日数や金額に明らかに身に覚えのないものがあれば、それが不正を発見する手がかりになります。

チェック機能② 

患者照会
そして、もう一つが、例の「患者照会」です。
この制度については、他の記事で「患者抑制に繋がるのでは」とその問題点を詳しく指摘していますが、建前上は、こうした水増し請求などの不正がないかを確認するためのチェック機能の一つ、とされています。

院長
院長

ある日突然、見慣れない封筒が届いて、驚かれましたよね。ご安心ください。これは決して、あなたを疑うものではありません。なぜこれが届き、どう対応すれば良いのか、一つずつ、丁寧にご説明しますね。

→ 接骨院の「患者照会」が来たら?対処法と全知識


【専門家が解説】白紙へのサイン ― その“仕組み”と“信頼関係”の真実

Q
そもそも、なぜ、あのサインが必要なのですか?
A

A. それは、あなたと私たちが「Win-Win」の関係を築くための、大切な“契約書”だからです。

あのサインは「受領委任」という制度に基づくもので、一言で言うと「面倒な保険請求手続きを、私たちがあなたに代わって無償で代行します」という委任状です。
これにより、

  • あなた(患者様)は…
    窓口での支払いを一部負担金だけで済ませられ、高額な治療費を立て替える必要がなくなります。
  • 私たち(施術者)は…
    患者様が経済的な負担を気にせず、安心して通院を続けていただけるようになります。

このように、受領委任は、お互いの信頼関係があって初めて成り立つ、双方にメリットのある素晴らしい制度なのです。

Q
でも、なぜ「白紙」の状態でサインさせるのですか?
A

A. それは、保険請求が「1ヶ月分をまとめて」月末に行われる、制度上のルールだからです。

月の初めに来院された時点では、その月にあと何回通うかは決まっていません。そのため、「今後の治療も含めて、月末の請求をお任せします」という形で、未来の治療に対する信頼の証として、先にサインをいただく必要があるのです。これは、多くの誠実な接骨院で行われている、ごく一般的な手続きです。

Q
もし信頼できない場合、拒否することもできますか?
A

A. はい、もちろん可能です。その際は、患者様ご自身で保険請求を行っていただくことになります。

受領委任制度の利用は、患者様の権利であり、義務ではありません。もし利用を希望されない場合は、窓口で治療費の全額(10割)をお支払いいただき、後日ご自身で保険組合へ還付請求を行っていただく「償還払い」という形になります。どちらの方法を選ぶかは、患者様の自由です。

Q
ではなぜ、「不正では?」という声がなくならないのですか?
A

A. それは、一部の不誠実な院の存在と、そして、私たち施術者でさえ首をかしげるような、保険組合による“過剰な調査(患者照会)”が、患者様の不安を煽っているからです。

私たちは、この患者照会という制度が、時に患者様の正当な受療権を脅かしかねない、という問題意識を強く持っています。だからこそ、その詳細を別の記事で徹底的に解説し、患者様が不利益を被らないよう、全力でサポートしています。
【専門家が全解説】接骨院から届く“調査”の正体(受診照会)

私たちの本当の“敵”は、患者様ではありません。それは、この素晴らしい信頼関係の仕組みを、歪めてしまう、一部の悪意や、制度そのものが抱える“矛盾”なのです。

そのサインは、あなたと私たちとの「信頼の証」

この「受領委任」という制度は、
患者さんと施術者の間の「信頼」を土台とし、
それを「医療費のお知らせ」などの公的なチェック機能
が後ろから支えることで、成り立っています。

私たちは、その信頼に日々応えるべく、一件一件、誠実に業務を行っています。
あなたが施術後に何気なくしているサインは、単なる事務手続きではありません。
それは、あなたの体を任せるという、私たち専門家への「信頼の証」なのです。

その重みを、私たちは決して忘れません。

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この記事では「患者照会」という、少し専門的なテーマについて解説しました。
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