「マッサージしても、また元通り…」
「レントゲンで異常なしと言われたのに、この痛みは何なんだ…」
「手術を勧められたけど、本当に治るんだろうか…」
長年、痛みに苦しむあなたが、一度は抱いたことのある、その不安。
もし、その「治らない原因」が、私たちが信じてきた「痛みの常識」そのものの、間違いにあるとしたら…?
この記事では、近年、テレビなどでも注目を集める、痛み研究の第一人者・愛知医科大学の牛田享宏教授が語る、私たちの常識を根底から覆す「痛みの新常識」について、一人の臨床家としての視点を交えながら、分かりやすく解説していきます。
こちらの動画を見た時に思い出したもう一つの動画がこちら
→なぜ、あなたの痛みは治らないのか?― 最新研究で解き明かされる「痛みの、本当の姿」
(▼今回、議論の元となった、非常に示唆に富む動画はこちらです)
この記事を読み終える頃、あなたは、ご自身の痛みの「本当の正体」を知り、「これから、何をすべきか」という、明確な光を見出しているはずです。
【第1章】常識の崩壊① 「見た目(画像診断)」と「痛み」は、全くの別物である
衝撃の事実① 「膝が変形しても、痛いのは3人に1人」
牛田教授の研究によると、レントゲンで骨が激しく変形していても、実際に痛みを訴えるのは、3人に1人程度だと言います。この事実は、「痛みの原因は、画像の見た目だけでは、決して判断できない」という、極めて重要な現実を、私たちに教えてくれます。
衝撃の事実② 「手術しても、痛みは治らないことが多い」
同様に、メスで原因と思われる箇所を取り除いても、痛みが消えるとは限りません。なぜなら、痛みの原因は、手術で取り除けるような、単純な物理的損傷だけではないからです。

これは、私が日々の臨床で、常に感じていることです。「先生、軟骨がすり減ってるから、痛いんですよね?サプリとか、飲んだ方がいいですか?」本当によく聞かれる質問ですが、私はいつもこうお答えしています。「その痛み、本当に軟骨のせいだと思いますか?軟骨減ってても痛くない人もたくさんいますよ」と。この話は、私が以前に書いた、『ヘルニアの記事』とも、深く繋がっています。私たちは、あまりにも「レントゲン写真」という、静止画に、囚われすぎているのです。
→ 関連記事:『「ヘルニアだから安静に」だけじゃない。〜』
【第2章】常識の崩壊② 「安静」は、むしろ“害”である
新常識① 「良い姿勢」を続けるのも、一種の“不自然”
良い姿勢はもちろん大切ですが、問題は、「ずっと、同じ姿勢でいること」そのものです。「良い姿勢」もまた、特定の筋肉にとっては、一つの「ストレス」となり得ます。
新常識② 「じっとしている」と、神経が過敏になる
さらに、教授の研究では、関節を動かさずに「安静」にしていると、私たちの神経は、むしろ過敏になり、「ここに炎症があるぞ」という、偽りの痛み信号を、脳に送り始めてしまうことさえある、というのです。

これも、本当にその通りで、よく患者さんに「入院して、ずっとベッドで寝てたら、腰って痛くなるじゃないですか?…」と説明しています。
良い姿勢は大事なんですが良い姿勢でもずっと同じ姿勢はだめです。良い姿勢は骨で座る。悪い姿勢は筋肉で座るようなイメージです。
悪い姿勢はしようと思わなくてもできるので、最初くらいいい姿勢で座りませんか?って話します。
あと、長時間の座り仕事の人なんかには「ちょくちょく立つ用事作ってね」って指導したりしています。
【第3章】では、本当の「犯人」は誰なのか? ― 3種類の痛み
では、私たちの体を悩ませる「痛み」の正体とは、一体何なのでしょうか。
牛田教授は、痛みの原因を、大きく3つに分類しています。この分類を知ることが、あなたの痛みを、客観的に理解するための、最初の大きな一歩となります。
① 侵害受容性疼痛(いわゆる“ケガ”の痛み)
これは、私たちが最もイメージしやすい、伝統的な痛みです。
捻挫や打撲、骨折などによって、体の組織が物理的に損傷し、その場所から「痛い!」という信号が、神経を通って脳に送られることで発生します。原因がはっきりしており、基本的には、その損傷が治れば、痛みも消えていきます。
② 神経障害性疼痛(“神経”そのものの痛み)
これは、少し厄介な痛みです。痛みの原因が、体の損傷部位ではなく、脳へと繋がる「神経」そのものにあるケースです。
例えば、脳梗塞の後遺症で、麻痺した手が痛んだり、腰のヘルニアで、足にまでしびれや痛みが出たりするのが、これにあたります。痛いのは「手」や「足」でも、本当の犯人は、そこにはいないのです。
③ 痛覚変調性疼痛(“脳と心”が生み出す痛み)
そして、多くの慢性痛の、本当の原因となっているのが、この、最も複雑で、見えにくい痛みです。
これは、体に明確な損傷や、神経の傷がないにも関わらず、「脳」そのものが、痛みに対して、極度に過敏になってしまうことで発生します。
牛田教授は、その引き金として、
- 過去の、強い痛みの「記憶」
- 現在の、社会的な「ストレス」
- そして、時には「幼少期の体験」
までもが、複雑に影響し、脳が「痛みの回路」を、暴走させてしまうのだと、解説しています。風が吹いただけでも、激痛として感じてしまう、という極端なケースも、この痛みに分類されます。
(ここに、動画の解説を、分かりやすくまとめる。特に③の「過去の記憶」「ストレス」「幼少期の体験」が、脳を過敏にさせる、という部分を強調する)

牛田教授は、さらに、「痛みとは、感覚と“苦痛”が伴った、不快な体験」だと定義しました。「好きなつねられても、それは嬉しいだけ」という、あのユーモラスな例え。あれこそが、痛みの本質を、完璧に捉えています。
私たちの仕事は、単に「ケガ」を治すだけではありません。患者様が、その痛みに、どんな「物語」や「感情」を抱えているのか。その、目に見えない「苦痛」に寄り添うことこそが、本当の治療なのだと、改めて感じさせられました。
【結論】そして、私たちは、どこへ向かうべきか
この「痛みの新常識」を知った今、長年の痛みに悩む私たちは、どこへ向かえば良いのでしょうか。
その答えは、もはや、一つしかありません。
- レントゲン写真だけでなく、あなたの「体」と「物語」に、深く向き合ってくれる。
- 「気のせい」「ストレスのせい」という言葉で、あなたの訴えから逃げない。
- そして、この「痛みの複雑さ」を、深く、深く、理解している。
そんな、信頼できる「かかりつけの専門家」を見つけ、二人三脚で、あなたの「痛みの物語」を、解き明かしていくこと。
それこそが、長年の苦しみから抜け出すための、唯一にして、最高の道すじなのです。
【出典・参考文献】
- 動画:『手術しても痛みは治らない?膝が変形しても痛くない?“痛みの最新科学”を第一人者に聞く』
https://youtu.be/kptVvxdoXs8?si=NQYepl1r2welSqbE- 書籍:牛田享宏『痛みとは何か』
私たちの、このウェブサイト全体が、まさに、この「痛みの新常識」に基づき、あなたの悩みを、根本から解き明かすために作られた「図書館」です。