こんにちは、なかの接骨院の院長、中野です。
昨日は、部活帰りに中学生の男の子が来院されました。
陸上部に所属している彼は、浮かない顔でこう訴えていました。

「先生、なんか膝のお皿が下がっている気がするんです。お皿の下全体が痛くて…」
膝を見ると、確かに「過伸展(膝が逆に反りすぎている状態)」気味です。
一見すると、オスグッドやジャンパー膝のように「膝の前側」の問題に見えます。
しかし、体を触診していくと、本当の“真犯人”は全く別の場所に潜んでいました。
痛みの正体は「大腿筋膜張筋」のガチガチな張り
結論から言うと、彼の膝の痛みの原因は、太ももの外側にある「大腿筋膜張筋(だいたいきんまくちょうきん)」でした。
ここが驚くほどガチガチに固まっており、それが膝の外側からお皿周りの組織を強く引っ張り続けていたのです。
これが原因で、本人の「お皿がおかしい」という違和感や、全体的な痛みに繋がっていました。
施術でこの筋肉を丁寧にリリース(解放)したところ…

「えっ、痛くない! さっきまでの違和感が全然ないです!」
と、その場で劇的に症状が改善しました。
やはり、「痛む場所に原因はない」ということを再確認した瞬間でした。
なぜ、そこが固まったのか?(ランナー特有の事情)
治療はここで終わりではありません。「なぜそうなったのか?」を彼に理解してもらうことが、再発を防ぐために最も重要です。
- 1骨盤の前傾 × 太もも外側の緊張
速く走るための前傾姿勢と、それに連動する「大腿筋膜張筋」の緊張はセットで起こります。これが膝を外側から強く引っ張る土台となっていました。
- 2上半身の代償(猫背・ストレートネック)
土台(骨盤)が前に傾きすぎると、体はバランスを取るために上半身を後ろに丸めます。これが背中の張りや首の不調の原因です。
- 3膝への牽引ストレス
そして、①の緊張が逃げ場を失い、最終的に最も弱い「膝のお皿周り」に痛みを発生させていたのです。
陸上選手は、速く走るためにどうしても「骨盤を前傾させる(前に倒す)」必要があります。
しかし、この「骨盤前傾」が強くなりすぎると、以下の“負の運動連鎖”が起きます。
彼にも、「君の膝が悪いんじゃなくて、走るためのフォームの代償が膝に来ていたんだよ」と伝え、全身の繋がり(キネティックチェーン)について説明しました。
「自分の体は、自分で守る」
当院で治療すれば、今の痛みは取れます。
しかし、彼は明日も明後日も走り続けます。毎日の練習の積み重ねによるストレスは、週に数回の通院だけではカバーしきれません。
だからこそ、彼には以下のセルフケアを指導しました。
- フォームローラーを使った、太もも外側のリリース方法
- マッサージガンを使った、ピンポイントのケア
「練習と同じくらい、ケアも大事なトレーニングの一部だよ」
そう伝えると、彼は真剣な眼差しで頷いてくれました。
スポーツを頑張る学生さんの、「痛みの謎」が解けた時のパッと明るくなる表情。
これを見るのが、治療家として一番嬉しい瞬間です。
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今回のケースのように、痛む場所と原因が違うことは多々あります。
「膝の痛み」の根本原因について、さらに詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。

