「肩を回すと、背中のあたりでゴリゴリと嫌な音がする…」
「背中が鉄板のようにガチガチで、何をしても肩こりが取れない…」
「自分の肩甲骨が、背中に張り付いているような感覚がある…」
もし、あなたがそんな深刻な悩みを抱えているなら、その原因は、動かなくなった「肩甲骨」にある可能性が非常に高いです。
- 不快な「ゴリゴリ音」の科学的な正体
- 「息を吸うと背中が痛む」本当の理由
- プロが実践する、安全で効果的な3ステップセルフケア
- 再発させないための、根本的なアプローチ
巷にあふれる情報とは一線を画す、専門家の知見で、あなたの“翼”を解放しましょう。
この記事では、具体的なセルフケアの方法を専門的に深掘りします。もし、ご自身の症状が何なのかまだ分からない方や、肩甲骨に関する全体の悩みをまず知りたい方は、全ての記事の司令塔である『肩甲骨の教科書』からお読みいただくことをお勧めします。
その「ゴリゴリ音」、正体は何?考えられる3つの原因
なぜ、あなたの肩甲骨は不快な音を立てるのでしょうか。専門的な視点から、その原因を分かりやすく解説します。
筋膜の癒着と滑走不全(最も多い原因)
私たちの肩甲骨は、肋骨の上を滑るように動く「肩甲胸郭関節」という機能的な関節を構成しています。この滑らかな動きは、肩甲骨の下にある「肩甲下筋」と、そのさらに下で肋骨を覆う「前鋸筋」という2つの筋肉の層が、互いにスムーズに滑り合うことで実現されています。
しかし、長時間のデスクワークなどで姿勢が悪くなると、これらの筋肉を覆う「筋膜」同士が癒着し、滑りが悪くなります。この筋膜の癒着による摩擦が、「シャリシャリ」「ザラザラ」といったゴリゴリ音の最も一般的な原因です。
筋肉の硬結(トリガーポイント)
僧帽筋や菱形筋といった、肩甲骨を直接動かす筋肉の一部が、過度な緊張によって硬い“しこり”状になることがあります。この硬くなった筋線維の塊(トリガーポイント)が、肩甲骨を動かした際に、骨の縁などに引っかかり、乗り越える瞬間に「ゴリッ」という、より大きな音を発生させることがあります。
弾発肩甲骨など、専門的な介入が必要なケース
もし、音が鳴る際に強い痛みや明らかな引っかかり感を伴う場合は、筋肉間の潤滑油の役割を果たす「滑液包」が炎症を起こしている「弾発肩甲骨(だんぱつけんこうこつ)」や、稀に骨の変形などが原因の可能性もあります。これらの場合はセルフケアで悪化する恐れもあるため、自己判断せず、必ず整形外科などの専門機関を受診してください。
なぜ、あなたの肩甲骨は「張り付いて」しまうのか?
では、なぜ肩甲骨の滑らかな動きが失われ、「癒着」が起きてしまうのでしょうか。その原因は、私たちの現代的な生活習慣そのものに隠されています。
- 圧倒的な「運動不足」
- 逃れられない「姿勢不良」

この「姿勢不良」こそが、あらゆる不調の“黒幕”です。ご自身の姿勢タイプと根本的な治し方を知りたい方は、まずこちらの専門書をご覧ください。
【警告】その“ゴリゴリ音”、放置しても大丈夫?
「痛くないから大丈夫」と、肩甲骨のサインを見過ごしていませんか?
肩甲骨の動きの悪さは、将来的に「五十肩」のように肩が固まってしまったり、「インピンジメント」のように腕を上げる際に激痛が走る原因となる可能性があります。
そうなる前に、まずはご自身の体の状態を正しく知ることが重要です。
もし、ゴリゴリ音だけでなく、「腕が上がりにくい」「夜も痛む」といった他の症状に心当たりがある方は、司令塔ページである『肩甲骨の教科書』の症状別診断で、ご自身の状態をより詳しく確認してください。
実践編|ガチガチ肩甲骨を解放する“3ステップ”セルフケア
ただやみくもに背中を伸ばすのは非効率的です。根本改善のためには、①ゆるめる → ②動かす → ③安定させる という3段階のアプローチが、再発させないためのプロの常識です。
ステップ1【解放】
まずは“ブレーキ”を外す「筋膜リリース」
猫背の人は、体の前面の筋肉が縮こまって、背中側の筋肉を常に引っ張っています。まずは、この“ブレーキ”となっている体の前面を解放することから始めましょう。
ターゲット①:小胸筋(体の前面)のリリース
- テニスボールやマッサージボールを用意します。
- 鎖骨の下、肩の付け根の少し内側あたりにある、押すと「ズーン」と響くような硬い場所(小胸筋)を見つけます。
- 壁にボールを当て、自分の体重をかけて「痛気持ちいい」と感じる強さで圧迫します。
- そのまま30秒ほど深呼吸をしながらキープするか、小さく体を揺らして筋肉をほぐします。
ターゲット②:菱形筋・僧帽筋(体の後面)のリリース
- フォームローラーやストレッチポールの上に仰向けに寝ます。
- 肩甲骨の内側の縁あたりにローラーが当たるように位置を調整します。
- 両膝を立て、体を少し左右に傾けながら、背骨と肩甲骨の間にある筋肉(菱形筋・僧帽筋)をゆっくりとほぐしていきます。
ステップ2【可動】
“本当に動かすべき筋肉”を目覚めさせる「肩甲骨はがし」
肩甲骨回し(基本の動き)
下の図を参照ください。

エクササイズ①:キャット&カウ(基本の滑走運動)
- 四つ這いになります。手は肩の真下、膝は股関節の真下に置きます。
- 息を吐きながら、背中を丸め、両方の肩甲骨を背骨から最大限に「引き離し」ます。
- 息を吸いながら、胸を張り、両方の肩甲骨を背骨に向かって「引き寄せ」ます。
- この動きを、呼吸に合わせて10回ほどゆっくり繰り返します。
エクササイズ②(最重要):ウォールプッシュアップ・プラス(前鋸筋の活性化)
多くの人が見落としていますが、肩甲骨を肋骨に安定させる“最強のインナーマッスル”が、脇腹にある「前鋸筋」です。この筋肉がサボっていると、どんなに他の筋肉をほぐしても、肩甲骨はすぐに不安定な状態に戻ってしまいます。このエクササイズは、その前鋸筋をピンポイントで目覚めさせる、最も重要な運動です。
- 壁に向かって立ち、肩の高さで両手を壁につきます。
- 肘を軽く曲げた状態から、息を吐きながら、壁を「もう一押し」するようなイメージで、背中を丸めていきます。この時、肩甲骨が外側に開くのを感じてください。
- 息を吸いながら、ゆっくりと元の位置に戻ります。これを10回繰り返します。
ステップ3【安定】
日常生活で“良い位置”を保つ
エクササイズで動きを取り戻しても、日常の姿勢が悪ければ意味がありません。解放され、目覚めた肩甲骨を、日常生活の中で「正しい位置」に保つ意識が、再発を防ぐ最後の鍵となります。
- 意識改革:デスクワーク中、時々「肩甲骨を軽く寄せて、少し下げる」意識を持つだけで、姿勢は劇的に変わります。
- ツールの活用:ストレッチポールや姿勢サポートインナーは、無意識のうちに崩れがちな姿勢をサポートし、良い状態を体に思い出させるための有効なツールです。
【専門家の道具箱① マッサージガン】
もし、あなたが「マッサージガン」をお持ちなら、ぜひ、鎖骨の下にある「小胸筋」という筋肉に、優しく当ててみてください。この筋肉がゆるむだけで、驚くほど肩が開きやすくなります。
【専門家の道具箱② ストレッチポール】
もし、あなたが「ストレッチポール」をお持ちなら、それは“寝るだけ”で猫背と巻き肩をリセットできる、最強のツールになります。
ポールの上に仰向けに寝て、両腕をリラックスさせて横に広げるだけで、重力があなたの代わりに、固まった胸の筋肉(小胸筋)をじっくりと、そして安全にストレッチしてくれます。この状態で深呼吸を繰り返すだけで、背中に張り付いていた肩甲骨が、自然とあるべき位置へと戻っていくのを感じられるはずです。
【専門家・学生向け】理学療法における最新の肩甲骨アプローチ
ここからは、より専門的な内容に興味がある方向けの解説です。当記事でご紹介したセルフケアが、どのような科学的根拠に基づいているのかを解説します。
↓より専門的な内容に興味がある方は、以下のボックスをタップ(クリック)してください。
現代の肩甲骨アプローチを支える「3つのコンセプト」
コンセプト①:「位置」から「運動パターン」へ
重要なのは、肩甲骨が静止している位置(Position)よりも、腕を動かした時にどのように動くか(Pattern)です。この運動パターン異常を「肩甲骨ジスキネジア」と呼び、これを正常化することが最大の目的です。
コンセプト②:「弛緩」から「制御」へ
硬い筋肉(例:小胸筋)をゆるめるだけでは不十分です。サボっている筋肉(例:前鋸筋)を活性化させ、肩甲骨を「制御(コントロール)」できるようにすることが根本改善の鍵です。
コンセプト③:「肩」から「全身」へ
肩甲骨の動きは、その土台である胸椎や肋骨の動きと完全に連動しています。胸椎が伸展(胸を張る動き)しない限り、肩甲骨は正しく上方回旋できません。
理学療法における最新の手技と運動
① 最新の理学的手技(マニュアルセラピー)
| 手技名 | 目的とアプローチ |
|---|---|
| 肩甲胸郭関節 モビライゼーション | 理学療法士が直接、患者様の肩甲骨の下に指を入れ込み、肋骨の上を滑らせるように動かす。癒着した前鋸筋と肩甲下筋の間の滑走性を物理的に改善する、最も直接的な「はがし」。 |
| PNF (固有受容性神経筋促通法) | 特に硬くなった筋肉に対し、「Contract-Relax(収縮-弛緩)」テクニックを用いる。神経の反射を利用して、通常よりも深く筋肉を弛緩させる。 |
| 胸椎・肋骨 モビライゼーション | 肩甲骨の土台である背骨(胸椎)や肋骨の一つ一つの関節に、細かな圧や振動を加えて動きを引き出す。「レール」そのものの動きを改善する。 |
| 神経 モビライゼーション | 肩甲骨周りの神経が周囲の組織と癒着して滑りが悪くなっている場合、神経そのものを優しく滑走させる特殊な手技。しびれを伴う場合に有効。 |
② 最新の理学療法的運動(モーターコントロール)
| 運動コンセプト | 具体的なエクササイズ例 | 目的とポイント |
|---|---|---|
| 前鋸筋の 選択的活性化 | ウォールスライド フォームローラースライド | 最重要エクササイズの一つ。肩をすくめる代償動作を抑制し、肩甲骨を正しく上方回旋させる主役である「前鋸筋」を選択的に使う感覚を脳に再教育する。 |
| 僧帽筋下部線維の 活性化 | プローンYレイズ | 肩甲骨を下方へ引き下げ、安定させる役割を持つ「僧帽筋下部線維」を目覚めさせる。肩をすくめるクセがある人には必須。 |
| 動的安定化と 運動制御 | Scapular Clock (スキャプラ・クロック) | 腕や体幹を固定したまま、肩甲骨だけを分離して、あらゆる方向にコントロールする能力を高める。「肩甲骨を使いこなす」ための脳トレ。 |
| 閉鎖性運動連鎖 (CKC) での統合 | 四つ這いでの対角線リーチ バランスボール上でのプッシュアッププラス | 手をついた安定した状態で、肩甲骨と体幹の正しい連動パターンを体にインプットする。 |
当記事で紹介している3ステップのセルフケアは、これらの専門的なコンセプトに基づき、ご自宅で安全かつ効果的に実践できるように再構成したものです。
肩甲骨の内側の痛みの真相 なぜ呼吸と連動するのか?
「大きく息を吸うと、肩甲骨の内側がズキッとする…」
その痛みの“犯人”は、肩甲骨そのものではなく、その深層にあり、呼吸と直接連動する特殊な筋肉かもしれません。
痛みの主犯格:「上後鋸筋(じょうこうきょきん)」とは?
背骨から肋骨にかけて斜めに付着している「上後鋸筋」は、息を吸う際に肋骨を引き上げる役割を持つ、呼吸を補助する筋肉です。いわば「呼吸筋」の一つです。
この筋肉が猫背などで硬くなっていると、深呼吸によって強く引き伸ばされる際に、鋭い痛みを発生させます。位置が肩甲骨のすぐ下にあるため、多くの人が「肩甲骨の内側の痛み」として感じるのです。
上後鋸筋へのアプローチ方法
この深層の筋肉にアプローチするには、フォームローラーが有効です。ステップ1で紹介した「菱形筋・僧帽筋のリリース」と同様の方法で肩甲骨の内側をほぐす際に、少し深呼吸を繰り返しながら行うと、より効果的に上後鋸筋をストレッチすることができます。
パフォーマンスを解放する。「本当の腕の動かし方」とは
そして、この「筋膜の癒着」の解消は、単なる痛みや音の改善だけでなく、あなたの身体能力(パフォーマンス)そのものを、大きく向上させる可能性を秘めています。
なぜなら、多くの人が「腕は、肩の関節から始まっている」と勘違いしていますが、本当は違うからです。
「腕は、背中にある、この“肩甲骨”から始まっている」
この感覚で肩甲骨から腕を動かして初めて、腕の力が、体幹という人間の最も強力なエンジンと直結するのです。痛みやゴリゴリ音の解消は、この、あなたの体に眠る本来の力を解放するための、最初のステップに過ぎません。
まとめ:あなたの“翼”は、もっと自由になれる
肩甲骨のゴリゴリ音や不調は、決して「年のせい」や「体質」ではありません。その多くは、筋膜の癒着や筋肉のアンバランスといった、明確な原因から生じています。
今回ご紹介した「解放→可動→安定」の3ステップは、その根本原因にアプローチするための、科学的根拠に基づいたアプローチです。1日5分でも良いので、まずは2週間、ご自身の体と向き合う時間を作ってみてください。あなたの“翼”が、驚くほど軽くなるのを感じられるはずです。
もし、痛みが改善しない、あるいは悪化する場合は、無理にセルフケアを続けず、私たちのような専門家にご相談ください。あなたの症状に合わせた、最適な解決策を一緒に見つけ出します。
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