健康保険組合から送付される「負傷原因の照会について(患者照会)」は、多くの患者様にとって、その目的と正しい書き方が分かりにくい、専門的な書類です。
この記事は、その書類が「なぜ届き」「何を意味し」「どのように対処すべきか」という問いに、専門家として網羅的に解説するだけではありません。
その一枚の紙の裏側にある“制度が抱える問題点”と、それが“なぜ、あなた自身を守るための知識に繋がるのか”という、より本質的なテーマにまで、踏み込んで解説します。
この記事を最後まで読むことで、あなたは、患者照会に関するあらゆる疑問を解消し、ご自身の正当な権利を守るための、正確で、力強い知識を全て手に入れることができます。
その書類の“正体”とは? ― あなたは疑われていません

ある日突然、見慣れない封筒が届いて、驚かれましたよね。ご安心ください。これは決して、あなた個人を疑うものではありません。なぜこれが届き、どう対応すれば良いのか、一つずつ、丁寧にご説明しますね。
この「負傷原因の照会について」という書類は、一般的に「患者照会」または「受診照会」と呼ばれます。
これは、あなたが接骨院・整骨院で健康保険を使って治療を受けた際に、その治療内容が健康保険のルールに正しく適合しているかどうかを、保険証の発行元である健康保険組合や市町村が、患者様ご本人に確認するための、ごく一般的な手続きです。
なぜ、あなたの元に届いたのか?
まず、最も大切なこととして、この書類が届いたからといって、あなたが不正を疑われているわけでは、決してありません。
健康保険組合には、加入者から集めた大切な保険料が、ルール通りに適正に利用されているかを確認する、重要な義務があります。そして、接骨院での保険診療は、「骨折、脱臼、打撲、捻挫、挫傷」といった“急性のケガ”にのみ適用が認められているため、「その痛みは、いつ、どこで、何をして痛めたものですか?」という原因を、患者様ご本人に確認する必要があるのです。
では、なぜ全員ではなく、一部の人にだけ送られてくるのでしょうか?
これには、いくつかの理由が考えられます。
- ランダム抽出
多くの保険組合では、請求の中から、コンピューターで無作為に抽出して送付しています。この場合、届いたことに特別な理由はありません。 - 通院期間や頻度
長期にわたる通院や、複数の部位を同時に治療している場合など、機械的な基準で「確認が必要」と判断されるケースもあります。 - 第三者からの情報提供
極めて稀ですが、第三者からの情報提供に基づき、調査が行われるケースも存在します。
しかし、どのような理由であれ、これが全国的に行われている、ごく通常の行政手続きであることに、変わりはありません。後ろめたいことが何もないのであれば、堂々と、正直に回答することが、最も賢明な対応です。
どう書けば正解か? ― その答えは、ネット上にはありません
「負傷原因」「施術内容」「日数」…専門的な項目を前に、どう書けば良いのか、ペンが止まってしまいますよね。
そして、多くの方が、その答えを求めてインターネットで「書き方」を検索するかもしれません。
しかし、専門家として、お伝えしなければならないことがあります。
一般的な書き方を解説するネット上の情報は、あなたの状況に完全に合致するとは限らず、結果として、意図せず不利益に繋がってしまう可能性も、ゼロではないのです。
なぜなら、保険組合や委託業者によって、書類のフォーマットや、質問の意図、求められる情報の粒度は、驚くほど異なるからです。中には、意図的に“間違えやすい”ように作られていると感じられるものも存在します。
最高の、そして唯一の正しい答えは、あなたのカルテ(診療録)や問診票を確認し、事実に基づいて回答することです。
そして、その記録を持っているのは、実際に施術を担当した、我々のような専門家だけなのです。
ですから、あなたが本当にやるべきことは、ただ一つ。
その書類を持って、施術を受けた接骨院へ行くか、LINEで相談することです。
当院では、次回のご来院時に書類をお持ちいただくか、公式LINEで書類の写真を送っていただければ、あなたのカルテを確認しながら、最も正確で、誠実な回答を、一緒に作成します。一人で悩む時間が、一番もったいない。どうか、ためらわずに、私たちを頼ってください。
【Q&A】専門家が答える“最後の不安” ― よくある質問

ここからは、皆さんが特につまずきやすいポイントについて、私の経験から、本音でお答えしていきますね。
- Q施術内容や日数を、よく覚えていないのですが…
- A
ご安心ください。数ヶ月前のことを正確に記憶している方の方が稀です。大切なのは、正直に「覚えていない」と記載することです。不明な点については、空欄のまま提出しても問題ありません。もしご不安であれば、当院にご連絡いただければ、記録を元に、施術日や内容の事実確認をサポートいたしますので、お気軽にご相談ください。
- Qもし間違えて書いてしまったら、どうなりますか?
- A
故意に嘘の記載をしない限り、単なる記憶違いで問題になることは、まずありません。保険者からの照会の目的は、あくまで請求内容が適正であるかの確認です。万が一、内容の不一致があった場合は、保険者から当院へ直接、内容の確認連絡が入るだけですので、患者様にご迷惑がかかることはありません。ご安心ください。
- Qこの書類、無視したらどうなりますか?
- A
これは、最も避けるべき対応です。回答がない場合、保険者は「保険請求の正当性が確認できない」と判断し、一度支払われた療養費(患者様が負担していない7〜9割の部分)の返還を、患者様自身に求めてくる可能性があります。必ず、期限内にご返送ください。
- Qなぜ、病院ではこんな調査が来ないのですか?
- A
これは、保険請求の仕組みの違いによるものです。病院が行うのは「保険診療」であり、請求は医療機関から審査支払機関を通じて直接行われます。一方、我々接骨院が行うのは「療養費」の請求であり、本来は患者様が全額を支払った後にご自身で請求するものを、特例(受領委任)で我々が代行しています。この“特例”が正しく運用されているかを確認するために、保険者は、患者様ご自身への確認を行うのです。
【結論】その知識を、あなたと、施術者を守る“盾”に
「患者照会」の仕組みから、その背景にある“現実”まで、ご理解いただけたでしょうか。
我々がこの記事を通して、本当に伝えたかったこと。それは、正しい知識を持つことこそが、理不尽な調査から、あなた自身と、あなたが信頼する施術者の両方を守る、最も強力な“盾”になる、という事実です。
もし、あなたが受け取った照会内容に、少しでも不安を覚えたり、納得がいかない点があったりした際には、どうか一人で悩まず、その書類を持って、施術を受けた接骨院にご相談ください。
誠実な専門家であれば、必ず、あなたの正当な権利を守るために、共に考え、行動してくれるはずです。
この記事では「患者照会」という、少し専門的なテーマについて解説しました。
そもそも、どのような基準で治療院を選べば良いのか、その全ての疑問を解決するための「総合案内所」は、以下のページです。まだご覧になっていない方は、ぜひブックマークしてお役立てください。
→ 【院の選び方】
【追伸】私たちが、この記事を本当に書きたかった理由
しかし、ここからが、この制度が抱える“過酷な現実”です。
残念ながら、正式な調査用紙とは別に、医療費の赤字がいかに深刻かを訴える文章や、巧みにあなたの通院を控えさせようとするような、注意喚起の用紙が、同封されていることがあるのです。ひどい場合には、あなたの職場にまで直接、問い合わせの電話が入ることさえあります。

「怪我をして、正しく保険を使っているだけなのに、なぜ、こんな思いを…」
私たち「なかの接骨院」は、(社)京都府柔道整復師会の正規会員です。万が一、度を超した照会があった場合には、業界団体として、あなたの代わりに声を上げることもできます。
そして、「もう面倒だから、自費でお願いしたい」とおっしゃる方の背景にある、この過酷な現実を、私たちは痛いほど理解しています。だからこそ、私たちは、そんなあなたのための“もう一つの道”も、ご用意しています。
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