【専門家が解説】その膝の“引っかかり”、本当に手術しかない? ― タナ障害の“本当の”治し方

膝を曲げ伸ばす、特定の角度で、決まって生じる、「コリッ」という不快な音と、何かが挟まるような、鋭い痛み。

病院でレントゲンを撮っても、「骨に異常はありません」と言われ、原因が分からないまま、不安な日々を、過ごしてはいませんか?

こんにちは。長岡京市のなかの接骨院です。

その、あなたの“正体不明の痛み”の犯人は、もしかしたら、「タナ(滑膜ヒダ)」という、胎児期の名残である、小さな“ヒダ”が、起こしているのかもしれません。

この記事は、「タナ障害」と診断され、「手術しかないのか…」と、諦めかけている、あなたのため。
あるいは、ご自身の膝の“引っかかり”の原因が分からず、途方に暮れている、あなたのために書かれました。

手術という、最終手段の前に、我々、徒手療法の専門家が、提供できる“希望”があることを、科学的根拠に基づき、お話しします。

【鑑別診断】その“引っかかり”本当に「タナ」が原因か?

“タナ”とは何か? ― 全ての人が持つ、胎児期の名残

まず、ご理解いただきたいのは、「タナ(滑膜ヒダ)」それ自体は、病気ではない、ということです。
これは、お母さんのお腹の中にいた頃、膝の関節が作られる過程の名残であり、程度の差はあれ、多くの人が、生まれつき持っている、ごく正常な組織です。

“半月板損傷”との、決定的な違い

膝の「引っかかり」には種類があります。ご自身の症状がどちらに近いか確認してみましょう。

タナ障害の可能性(偽ロッキング)

💡

膝を伸ばしたり、少し動かすと、引っかかりが“外れる”感覚がある。

半月板損傷の可能性 (真性ロッキング)

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物理的にロックされ、簡単には“外れない”ことが多い。

自宅でできる、セルフチェック法

もし、あなたがご自身の症状を、より詳しく知りたいのであれば、専門家が用いる、一つの簡単なテスト法があります。(※注意 強い痛みを感じる場合は、絶対に、無理に行わないでください)

【タナ・テスト】
  1. 椅子に座り、膝を90度に曲げます。
  2. 痛い方の膝のお皿(膝蓋骨)の、内側の縁を、指で、優しく、押さえます。
  3. そのまま、ゆっくりと、膝を、伸ばしたり、曲げたりを、繰り返します。

この時、指の下で、「コリッ」という、ヒダが骨に乗り越えるような、再現性のあるクリック音や、痛みを感じる場合、タナ障害の可能性が、より高まります。

【根本原因】なぜ、あなたの“タナ”は、悲鳴を上げるのか?

タナ障害は、「タナ」そのものが、悪いわけではありません。
それは、あなたの“体の使い方”のエラーによって、本来は問題を起こさないはずのタナが、関節に、繰り返し、挟み込まれ、“結果として”、炎症を起こしてしまった状態なのです。

原因① 大腿四頭筋の、過剰な“緊張”

タナは、太ももの前の筋肉である、大腿四頭筋の、筋膜とも、繋がっています。

そのため、オーバーワークや、不適切なフォームによって、大腿四頭筋が、常に、過剰な緊張状態にあると、その“硬さ”が、膝関節の正常な運動を妨げる、一つ目の根本的な要因となります。

原因② 膝蓋骨の、“軌道異常”

そして、より、本質的な原因が、これです。
我々が、他の記事でも、繰り返し、解説してきた「膝蓋大腿関節症」との、深い関連性です。

大腿四頭筋の、筋力バランスの崩れによって、お皿(膝蓋骨)が、本来走るべき、正しい“レール”の上を、滑走できなくなった状態。この“軌道異常”が、二つ目の決定的な要因です。

【発生機序】2つのエラーが引き起こす“挟み込み”

これら2つの“体の使い方エラー”が、重なった時。

① 過剰に緊張した大腿四頭筋が、常に、タナを関節の隙間へと、強く、引きずり込み…。

② 軌道を外れた膝蓋骨が、その引きずり込まれたタナを、大腿骨との間に、物理的に、挟み込み、すり潰してしまうのです。

この、繰り返される“挟み込み”と“摩擦”こそが、あなたのタナに炎症を引き起こし、「コリッ」という不快な音と、鋭い痛みを発生させる、真犯人です。

【タナ障害における、手術 vs 手技療法】

では、「もう手術しかないのか?」という問いに対する、私たちの見解を、科学的根拠に基づき、お話しします。

結論から、申し上げます

世界的コンセンサス

タナ障害の第一選択は、例外なく“保存療法”です。
手術は、3〜6ヶ月の質の高い保存療法で改善しない難治例に限定されます。

なぜ、すぐに手術とはならないのか?
それぞれの有用性と、そして“限界”を、客観的なデータと共に見ていきましょう。

1. 【手術療法】の、有用性と“限界”

まず、手術(関節鏡を使ったタナの切除術)の効果についてです。

有用性(“成功率”の罠)

複数の研究報告において、手術の「成功率」は、約60%〜94.6%と、非常に高く報告されています。

手術成功率

しかし、ここで注意が必要です。
この「成功率」という言葉は、必ずしも「痛みが完全になくなった(治癒した)」ことを意味するとは限りません。
これは、あくまで「関節鏡でタナを切除する」という、“手技そのものが、問題なく完了した”割合を指している場合が多いのです。

実際に、患者様の症状が改善したか、という視点で見ると、10%〜40%のケースで、症状が残存、あるいは再発した、という報告も存在します。
この数字の“乖離”こそが、手術の限界を考える上で、最も重要なポイントです。

症状が残存あるいは再発

しかし、その“限界”と“落とし穴”

この高い「手術的成功率」にもかかわらず、なぜ一定数の患者様が改善しないのか?
それは、この記事の前半で確認した通り、タナ障害の背景には、ほぼ例外なく「大腿四頭筋の過剰な緊張」や「膝蓋骨の軌道異常」といった、“体の使い方のエラー”が潜んでいるからです。

院長
院長

もし、これらの“根本原因”を放置したまま、結果として厚く硬くなってしまったタナだけを手術で切除しても、どうなるでしょうか?

それは、火災報知器の音だけを止めて、火元を放置しているようなものです。

痛みは再発する可能性があります。あるいは、膝の別の場所に新たな痛みが生じることも考えられます。これが、手術を受けても、真の“治癒”に至らないケースが存在する、最大の理由なのです。

2. 【手技療法(保存療法)】の、有用性と“本質”

では、我々、徒手療法の専門家が行う「手技療法(保存療法)」は、手術と何が違うのでしょうか。

有用性(経過)

手技療法を中心とした保存療法の成功率は、研究によって幅がありますが、約60%以上、多いものでは90%近くの患者で良好な結果が得られたと報告されています。
重要なのは、単なる数字ではありません。“なぜ、効果があるのか”という、そのアプローチの本質です。

手技療法の成功率

私たちが提供できる“本当の価値”

私たちの仕事は、炎症を起こしたタナを“消す”ことではありません。

1

“炎症”を、鎮める
物理療法やアイシング指導で、まず痛みの大元を正確に鎮静化させます。

2

“癒着”を、剥がす
硬くなったタナや周辺筋膜との癒着を、専門的な手技で丁寧に剥がします。

3

“根本原因”を、断ち切る
筋肉の緊張を弛め、膝のお皿の軌道を修正。挟み込みが起こらない体へ導きます。

過剰に緊張した大腿四頭筋を深部から弛め、タナへの不要な牽引力を取り除きます。

専門的な手技によって膝蓋骨が滑る“レール”を正常な軌道へと修正し、物理的な挟み込みが起こらない状態へと導きます。

つまり、私たちが目指すのは、“再発させない体”を、あなたと一緒に創り上げることなのです。