「〇〇さん、複雑骨折したんだって!」…それ、本当に?

「いやー、大変だったみたいですよ。〇〇さん、事故で複雑骨折しちゃって…」

院で仕事をしていると、患者さんやそのご家族との会話で、こんな話をよく聞きます。
皆さんも、ご友人や知人の方の怪我の話で、この「複雑骨折」という言葉を耳にしたことが一度はあるのではないでしょうか。

きっとその時、頭の中では「うわぁ、骨が何本も、何箇所も折れちゃったんだな…」とイメージされたと思います。

でも実は、それを聞きながら僕たち専門家は、心の中でこう思っています。
「(ふむふむ、なるほど。それはきっと『複数骨折』か『粉砕骨折』のことだろうな…)」と。

今日はそんな、多くの人が勘違いしている「複雑骨折」の本当の意味について、ちょっとした豆知識としてお話しさせてください。知っておくと、これから専門家と話すときに、少しだけスムーズになるかもしれませんよ。

【結論】あなたの思う「複雑骨折」は、たぶん「複数骨折」です

まず、皆さんが「複雑骨折」と聞いてイメージする「1本の骨が、何か所もポキポキッと折れている状態」。
これは医療の世界では、正しくは「複数骨折(ふくすうこっせつ)」
と言います。さらに細かく木っ端みじんになっている場合は「粉砕骨折(ふんさいこっせつ)」と呼んだりもします。

なので、「知人が何箇所も骨を折った」という話は、この「複数骨折」や「粉砕骨折」である可能性が非常に高いんです。

一口に骨折と行っても色々と分類できます。今回は細かい分類は置いといて複雑骨折までの分類をたどりましょう。

じゃあ、本当の「複雑骨折」って何?

では、僕たち専門家が言う「複雑骨折」とは一体何なのか。
それは、「折れた骨が、皮膚を突き破って外に飛び出してしまった状態」のことです。

そう、ポイントは折れた数ではなく、「骨が外に出たかどうか」なんです。
骨が皮膚の外に出て空気に触れてしまうと、治療が格段に難しくなるため、特別な呼び方をします。ちなみに、誤解を生まないように、最近の医療現場では「開放骨折(かいほうこっせつ)」
という言葉で説明されることがほとんどですね。

なんで骨が飛び出ると「複雑」なの?

「え、でも骨が飛び出ただけで、なんでそんなに話がややこしくなるの?」と思いますよね。
理由は大きく2つあります。

周りの組織もグチャグチャになっているから
骨が皮膚を破って出てくるということは、その間にある筋肉や血管、神経も一緒に破壊しているということです。骨をくっつけるだけでなく、それらも治さないといけない。だから治療が**”複雑”**になる、というわけです。

感染症のリスクが爆上がりするから
体の中は無菌ですが、骨が外気に触れた瞬間、細菌に汚染されます。これが元で骨が化膿すると、骨がくっつかなくなるなど、非常に厄介な事態になります。

骨折の分類マップで見てみよう!

言葉だけだとちょっとややこしいですよね。
ここで、僕が院で説明するときにも使っている骨折の分類マップを見てみましょう。

複雑骨折の分類

この図を見ると、「複雑骨折(開放骨折)」と、皆さんがイメージしていた「複数骨折」や「粉砕骨折」が、全然違う場所にあるのが一目でわかると思います。

まずは完全に折れているかどうかの分類で

明日から使える(かもしれない)豆知識

さて、いかがでしたでしょうか?
最後に今日のポイントを簡単におさらいします。

  • 皆が思う「何箇所も折れた骨折」 → 正しくは「複数骨折」
  • 本当の「複雑骨折」 → 骨が皮膚から飛び出た状態(開放骨折)

この知識、日常生活で絶対必要かと言われると、そうではないかもしれません(笑)。
でも、知っておくと、次に誰かが「複雑骨折したんだって」と話しているのを聞いたとき、「(ふふふ、それはきっと複数骨折のことだな…)」と心の中で思えたり、お医者さんや僕たちのような専門家と話すときに「開放骨折のほうですか?」なんて聞けたりして、コミュニケーションがグッと円滑になるはずです。

ちょっとした話のネタとして、ぜひ頭の片隅にでも置いておいてくださいね。

接骨院の「基本」をもっと知る

このように、専門的な言葉一つにも、正しい知識を持つことが大切です。
接骨院が「どんな場所」で、「どんな役割」を持っているのか、その全体像については、以下の案内ページで詳しく解説しています。ぜひ、併せてご覧ください。

→ 『【接骨院の基本を知る】院選びで失敗しないための3つの本質』

交通事故治療の「全体像」を、知る

この記事では、複雑骨折について、詳しく解説しました。
事故直後の正しい行動から、保険や慰謝料の知識まで、交通事故治療の全体像については、以下の『教科書』で、網羅的に解説しています。ぜひ、併せてご覧ください。

→ 『【交通事故治療の教科書】むちうち・後遺症・保険の全知識|整形外科と接骨院の賢い選び方』