健康保険組合や協会けんぽ等から送付される「負傷原因の照会について」、通称「患者照会」または「受診照会」は、多くの患者様にとって、その目的と正しい書き方が分かりにくい、専門的な書類(調査票・アンケート)です。
この記事は、その書類が「なぜ届き」「何を意味し」「どのように対処すべきか」という問いに、専門家として網羅的に解説するだけではありません。
その一枚の紙の裏側にある“制度が抱える問題点”と、それが“なぜ、あなた自身を守るための知識に繋がるのか”という、より本質的なテーマにまで、踏み込んで解説します。
この記事を最後まで読めば、あなたは、患者照会に関するあらゆる疑問を解消し、迷わず行動できる“たった一つの答え”にたどり着くことができます。
【結論】その書類の最適な対処法は、3つの選択肢のどれか?
施術から約3ヶ月後…「整骨院の受診照会」が届いたあなたへ。
3ヶ月も前に受けた整骨院の施術について、突然アンケートが届いた…。「いつ、どこで痛めたかなんて、正確に覚えてないよ!」そう思っていませんか? ご安心ください、それは普通のことです。しかし、この書類への対応を間違えると、少し面倒なことになるかもしれません。
あなたなら、どうしますか?
【選択A】無視する・放置する
~数ヶ月後~ 「何も起こらなかった…かもしれません。」
確かに、一度の無視で保険組合からすぐに連絡が来るケースは稀です。しかし、水面下では「接骨院への支払いが保留される」「あなたの名前が要注意リストに載る」といったリスクが進行している可能性が。そして最悪の場合、忘れた頃に「保険不適用のお知らせ」が届き、施術費用の全額請求という事態も…。プロとしては、決して推奨できない選択です。
【選択B】自己判断で、記憶を頼りに書く
「3ヶ月前のことだから、記憶が曖昧…」
良かれと思って書いた内容が、接骨院が提出したカルテの情報と少しでもズレていると…
保険組合:「あれ?話が違うぞ?」
→ あなたと接骨院の両方に、再確認の電話や書類が!
結局、二度手間になってしまい、余計な時間と心配が増えることに…。
【選択C】まず、施術を受けた接骨院に連絡する
「これが唯一の正解です!お見事!」
接骨院:「カルテを確認しますね。〇月〇日、〇〇をして痛めた、という記録になっていますよ。」
→ 記憶に頼らず、事実に基づいてスラスラ書ける!
→ 矛盾なくスムーズに提出完了!
結果:何の心配もなく、安心して保険診療が受けられます!
なぜ、あなたの元に届いたのか? ― 保険者によって異なる“調査の現実”

まず、最も大切なこととして、この書類が届いたからといって、あなたが不正を疑われているわけでは、決してありません。
この受診照会が届く理由は、保険証の発行元である「保険者」によって、その姿勢が大きく異なります。
パターン1:従来の一般的な調査(主に市町村の国保など)
多くの市町村国民健康保険(国保)などでは、従来通り、以下のような理由で送付されることが一般的です。
- ランダム抽出:請求の中から、コンピューターで無作為に抽出する。
- 通院期間や頻度:長期の通院など、機械的な基準で「確認が必要」と判断する。
この場合、届いたことに特別な理由はなく、あくまで形式的な手続きの一環です。
パターン2:近年の“過度な調査”(主に協会けんぽなど)
しかし、近年、特に協会けんぽなど一部の保険者から、全く異なる理由で照会が届くケースが激増しています。
これは、本来、患者様の正当な権利であるはずの保険診療に対して、まるで不正の温床であるかのような前提に立ち、必要以上の手間と不安を患者様に強いるものです。

「本当に、こんな過度な調査は必要なのか?」― 私たち現場の人間は、常にそう感じています。しかし、これが現実の制度である以上、私たちは患者様が不利益を被らないよう、全力でサポートするしかありません。
ですから、あなたの元に届いた理由が「従来のランダムな調査」であれ、「近年の過度な調査」であれ、それは決してあなたの利用方法に問題があったからではありません。後ろめたいことが何もないのであれば、堂々と、しかし慎重に、対応していきましょう。
なぜ「接骨院への相談」が唯一の正解なのか?
先程、選択肢で体感していただけた通り、この書類への最も確実な対応は「まず、施術を受けた接骨院に連絡する」ことです。その理由は、非常にシンプルです。
3ヶ月も前のことを、記憶だけで正確に記載するのは、ほぼ不可能です。もし良かれと思って書いた内容が、カルテの記録と少しでも異なっていた場合、保険組合は「話が違う」と判断し、あなたと接骨院の両方に再確認を行うなど、手続きが非常に煩雑になってしまいます。
ネット上の「記入例」を鵜呑みにしてはいけない、本当の理由
多くの方が「受診照会 記入例」と検索するかもしれませんが、それもまた危険な選択です。なぜなら、保険組合や委託業者によって、書類のフォーマットや質問の意図は、驚くほど異なるからです。あなたの状況に完全に合致する「完璧な記入例」は、ネット上には存在しません。
最高の、そして唯一の正しい答えは、あなたのカルテ(診療録)に記録されています。そして、その記録を持っているのは、実際に施術を担当した、我々のような専門家だけなのです。
【Q&A】専門家が答える“最後の不安” ― よくある質問

ここからは、皆さんが特につまずきやすいポイントについて、私の経験から、本音でお答えしていきますね。
- Q施術内容や日数を、よく覚えていないのですが…
- A
ご安心ください。それが普通です。だからこそ、ご自身で記入する前に、当院のような施術所に連絡することが大切なのです。当院にご連絡いただければ、記録を元に、施術日や内容の事実確認をサポートいたしますので、お気軽にご相談ください。
- Q提出期限がとても短いのですが、過ぎてしまったらもうダメですか?
- A
ご安心ください。結論から言うと、期限を多少過ぎても問題になることは、まずありません。この短い期限は、患者様が接骨院に相談する時間を与えず、焦って返信させるための意図があるとも考えられます。焦って不正確な内容で返信するくらいなら、期限が過ぎてでも、まず通われた接骨院(整骨院)にご相談いただき、正確な内容で一日でも早く返送する方が、よほど重要です。決して慌てないでください。
- Qなぜ、病院ではこんな調査が来ないのですか?
- A
これは、保険請求の仕組みの違いによるものです。病院が行うのは「保険診療」であり、請求は医療機関から審査支払機関を通じて直接行われます。一方、我々接骨院が行うのは「療養費」の請求であり、本来は患者様が全額を支払った後にご自身で請求するものを、特例(受領委任)で我々が代行しています。この“特例”が正しく運用されているかを確認するために、保険者は、患者様ご自身への確認を行うのです。
【結論】知識は、あなたと、誠実な施術者を守る“盾”になる
「患者照会(受診照会)」の仕組みから、その背景にある“現実”まで、ご理解いただけたでしょうか。
我々がこの記事を通して本当に伝えたかったこと。それは、正しい知識を持つことこそが、あなた自身と、あなたが信頼する施術者の両方を守る、最も強力な“盾”になる、という事実です。
問題の本質:なぜ、接骨院・整骨院ばかりが狙われるのか?
そもそも、なぜ近年これほどまでに調査が厳しくなったのか。その根底には、深刻な医療保険の財政赤字問題があります。医療費削減の必要性自体に、私たちが異を唱えるつもりはありません。
しかし、問題なのはその“やり方”です。
病院での高額な検査や長期的な投薬には寛容でありながら、国民の日常的な健康を支える私たち接骨院・整骨院の、比較的少額な施術費に対して、まるで目の敵のように厳しい調査の網がかけられている。これは、公平とは到底言えない、業界に対する“過度な圧力”であると、私たちは考えています。
必要な通院まで控えさせるような調査は、もはや医療費の適正化ではなく、国民の健康を損なう本末転倒な行為です。
読者が取るべき“唯一の正しい行動”
だからこそ、私たちは、この理不尽な圧力に屈しないために、患者様ご自身に“唯一の正しい行動”をお願いしています。
もし、あなたが受け取った照会内容に少しでも不安があれば、どうか一人で悩んだり、インターネットの不確かな情報に頼ったりせず、必ず、その施術を受けた接骨院にご相談ください。
あなたのカルテ(診療録)という“事実”に基づいて、誠実に対応してくれる専門家だけが、あなたの正当な権利を守るための、唯一のパートナーです。
なかの接骨院の約束と、この記事に込めた想い

私たちは、この記事を、単なる「なかの接骨院」の患者様のためだけに書いたのではありません。この理不尽な圧力に晒されている、全国の患者様と、志を同じくする誠実な施術者のために書きました。
残念ながら、私たちが直接サポートできるのは、当院に通院された患者様の照会のみです。全国から書類をお持ちいただいても、カルテがなければ責任ある回答はできません。
しかし、この記事で得た知識を“盾”として、あなたが通われている院の先生と共に、この圧力に立ち向かってほしい。そして、もし、あなたが通われている院で十分なサポートが得られない、あるいは、私たちのこの想いや姿勢に強く共感し、「こういう専門家がいる院でこそ、自分の身体を任せたい」と感じていただけたのなら、その時は、ぜひ当院の扉を叩いてください。
私たちは、単に痛みを治すだけでなく、このような制度の理不尽さから、あなたという“個人”を守る、京都・長岡京で最も頼れる存在でありたいと、本気で願っています。
そして、「もう面倒だから、自費でお願いしたい」とおっしゃる方の背景にある、この過酷な現実を、私たちは痛いほど理解しています。だからこそ、私たちは、そんなあなたのための“もう一つの道”も、ご用意しています。
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この記事では「患者照会」という、少し専門的なテーマについて解説しました。
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