スポーツ肘とは?基本的なメカニズムを理解しよう
スポーツ肘は、繰り返しの動作や過度の使用によって引き起こされる、肘関節周辺の筋肉や腱の障害の総称です。特に、野球、テニス、ゴルフなどのスポーツで多く見られ、年間10万人以上が治療を必要とする一般的なスポーツ障害です。
重要ポイント
- 10代から40代に多い障害
- 適切な治療を受けないと慢性化の恐れ
- 早期発見・早期治療が重要
スポーツ肘の発生メカニズム
スポーツ肘を理解するためには、肘の解剖学的構造、特に屈筋群と伸筋群について知ることが重要です。
1. 屈筋群の役割と障害
- 主な筋肉:橈側手根屈筋、尺側手根屈筋
- 機能:手首を曲げる、物を掴む
- 過負荷時の症状:
- 肘の内側の痛み
- 握力の低下
- 手首を曲げる際の違和感
2. 伸筋群の役割と障害
- 主な筋肉:総指伸筋、短橈側手根伸筋
- 機能:手首や指を伸ばす
- 過負荷時の症状:
- 肘の外側の痛み
- 物を持ち上げる際の痛み
- 手首を後ろに反らす動作での痛み
スポーツ肘の種類と特徴
野球では内側も外側も痛むことはあります。
ゴルフ肘は内側
テニス肘は外側
内側の原因は(屈筋群の付け根)
外側の原因は(伸筋群の付け根)
に原因があります。
それぞれに好発年齢や動作の違いはありますが、原因は同じところにあります。
1. 野球肘
- 内側型(ピッチャーズ・エルボー)
- 原因:投球動作での屈筋群への過度な負担
- 好発年齢:中学生~高校生
- 症状の特徴:
- 投球時の肘内側の痛み
- 徐々に進行する投球フォームの乱れ
- 投球速度の低下
- 外側型(リトルリーグ・エルボー)
- 原因:伸筋群への繰り返しのストレス
- 好発年齢:小学生~中学生
- 症状の特徴:
- 肘外側の痛みと腫れ
- 肘の伸展制限
- 投球動作時の違和感
2. テニス肘
- 主な原因:伸筋群の慢性的な炎症
- リスク要因:
- 不適切なラケットグリップサイズ
- フォームの問題
- 年齢(40代以上に多い)
- 特徴的な症状:
- ドアノブを回す時の痛み
- マウスクリック時の不快感
- 朝方の肘の硬さ
3. ゴルフ肘
- メカニズム:屈筋群の付着部での炎症
- 発症しやすい状況:
- スイング回数の急激な増加
- 不適切なクラブ選択
- 地面との接触時の衝撃
スポーツ肘のまとめ
スポーツ名 | 症状の発生部位 | 症状の原因となる筋群 | 主な疾患名 | 特徴 | 好発年齢 |
野球 | 内側・外側 | 屈筋群・伸筋群 | 野球肘 | 両方の部位で痛みが発生することがあり、ピッチャーに多い。 | ピッチャーズ肘: 10-14歳 リトルリーグ肘: 9-15歳 |
テニス | 外側 | 伸筋群 | テニス肘(上腕骨外側上顆炎) | ラケットを使用するスポーツで肘の外側が痛くなる。 | 30-50歳 |
ゴルフ | 内側 | 屈筋群 | ゴルフ肘(上腕骨内側上顆炎) | スイング動作で肘の内側に痛みが出やすい。 | 40-60歳 |
当院でのスポーツ肘治療について
スポーツ肘の痛みで悩んでいる方に対して、当院では効果的な治療を提供しています。適切な治療により、症状の改善を早め、日常生活やスポーツ活動への早期復帰を目指します。
具体的な治療方法
筋緊張の評価
- 屈筋群、伸筋群の緊張部位を丁寧に触診で特定します。
- 痛みの原因となっている筋肉の状態を詳しく確認します。
緊張部位の緩和
- 特定された緊張部位に対して、適切な手技を用いて緩和を行います。
- 患者さんの痛みの程度に合わせて、強さを調整しながら施術します。
近位付着部へのアプローチ
- 筋肉が骨に付着する部分(近位付着部)の負荷を軽減します。
- 過度な張力を解消し、肘関節への負担を減らします。
期待される効果
- 痛みの軽減: 肘関節周辺の痛みが和らぎます。
- 可動域の改善: 肘の曲げ伸ばしがスムーズになります。
- 機能回復: 日常生活やスポーツ活動が快適に行えるようになります。
治療を行う上での注意点
- 個別対応: 症状や原因は個人によって異なるため、一人一人に合わせた治療を行います。
- 経過観察: 定期的に症状の変化を確認し、必要に応じて治療内容を調整します。
- 総合的なアプローチ: 必要に応じて、テーピングや運動指導も併用します。
まとめ
スポーツ肘の治療は、的確な診断と適切な施術が重要です。当院では、筋緊張の緩和を中心とした治療により、効果的な症状の改善を目指します。
【治療のメリット】
再発予防: 正しい動作指導により、再発のリスクを減らすことができます。
専門的なケア: 熟練した施術者による適切な治療が受けられます。
早期回復: 適切な治療により、回復期間の短縮が期待できます。
スポーツ肘のセルフケアについて
スポーツ肘のセルフケアでできること
スポーツ肘の痛みで悩んでいる方は、専門家による治療と並行して、セルフケアを行うことで、症状の改善を早め、再発予防にも繋がります。
また実際に痛めている部位を断定してもらい、セルフケアのアドバイスを求めるのが最適です。
具体的なセルフケア方法
1. 休養
- 痛みが強い場合は、患部に安静を与えましょう。
- スポーツ活動は、痛みが出ている間は中止し、症状が落ち着いてから徐々に再開しましょう。
2. アイシング
- 痛みが強い場合は、氷嚢などで患部を冷やしましょう。
- 1回15~20分を目安に、1日に数回繰り返します。
3. ストレッチ
- 屈筋群と伸筋群のストレッチを毎日行いましょう。
- ストレッチをする際は、痛みが出ない範囲で行うことが大切です。
<屈筋群のストレッチ例>
- 手首を反らせて、反対の手で指をゆっくりと引く
- 肘を伸ばした状態で、手を後ろに回し、肩甲骨を寄せる
<伸筋群のストレッチ例>
- 手首を曲げて、反対の手で指をゆっくりと引く
- 肘を曲げ、反対の手で肘を押し、前腕を伸ばす
4. 温熱療法
- 痛みや炎症が落ち着いてきたら、温熱療法を行うことで血行が促進され、筋肉の回復を促します。
- 湯船に浸かる、温湿布を当てるなどが有効です。
5. 日常生活の注意点
- 患部への負担を減らすために、重い物を持たない、パソコン作業の時間を短くするなど、日常生活で注意しましょう。
- 正しい姿勢を心がけ、肩や首の筋肉もリラックスさせましょう。
セルフケアを行う上での注意点
- 痛みを感じたら、すぐに中止しましょう。
- ご自身の判断だけで行わず、専門家にご相談ください。
- 症状が悪化する場合は、すぐに接骨院、整骨院や医療機関を受診しましょう。
まとめ
スポーツ肘のセルフケアは、症状の改善を早め、再発予防に繋がる重要な要素です。しかし、ご自身の判断だけで行うのではなく、専門家のアドバイスを受けながら、適切なセルフケアを行いましょう。
【セルフケアを行う上でのメリット】
費用を抑える: 専門家による治療に比べて、費用を抑えることができます。
治療効果を高める: 専門家の治療と併用することで、より早く症状が改善する可能性があります。
再発予防: 適切なセルフケアを続けることで、再発のリスクを減らすことができます。
よくある質問(FAQ)
- Qスポーツ肘は完治するまでどのくらいかかりますか?
- A
症状の程度や治療法によって異なりますが、一般的に
- 軽症:2-4週間
- 中等症:1-3ヶ月
- 重症:3-6ヶ月以上
- Qスポーツ肘になったら、すぐに受診すべきですか?
- A
症状の大小にかかわらず早めの受診をお勧めします
- 早い段階での接骨院・整骨院への受診がおすすめです
- Q子供のスポーツ肘は大人と治療法が違いますか?
- A
はい、以下の点で異なります
- 成長軟骨への配慮が必要
- リハビリテーションの進め方
- 復帰時期の判断基準
まとめ
スポーツ肘は、適切な理解と対応により、多くの場合予防や改善が可能です。症状が出た場合は
- 早期の受診
- 適切な診断と治療計画の立案
- 段階的なリハビリテーション
- 再発予防のための継続的なケア
が重要です。日々のケアと予防を心がけ、楽しくスポーツを継続できるよう、この記事を参考にしていただければ幸いです。
※本記事の内容は一般的な情報提供を目的としています。実際の診断・治療については、必ず医療専門家にご相談ください。