【腰痛の教科書】なぜ、あなたの腰痛は治らないのか?― 原因の全てと、あなたが本当にやるべきこと

「マッサージに行っても、また元通り…」
「レントゲンで異常なしと言われたのに、この痛みは何なんだ…」

日本人の4人に1人が悩むと言われる腰痛。もしあなたが長年、その出口の見えない痛みに苦しんでいるなら、この記事は、あなたのための信頼できる“地図”となります。

この記事一枚で、あなたが抱える腰痛の「本当の正体」を見極め、遠回りをせず根本改善に至るための、全ての知識を手に入れることができます。

原因が特定できる「特異的腰痛」(15%)の可能性を知りたい方へ

もし、あなたの痛みが「骨に何か異常があるのでは?」という不安を伴う場合、こちらの専門記事がその答えを明確にします。ヘルニアや狭窄症など、代表的な5つの疾患の症状と違いを、専門家が徹底的に比較・解説しています。

『【腰痛5大疾患】ヘルニア・狭窄症…|症状の違いを徹底比較』

【ステップ1 現在地の確認】あなたの腰痛は、9割近くが“このタイプ”です

腰痛の治療は、まず自分の痛みがどのタイプに属するのかを知ることから始まります。腰痛は、大きく分けてたった2種類しかありません。

・非特異的腰痛 85%
・特異的腰痛  15%

腰痛の原因の割合を示す円グラフ。腰痛全体の85%は、レントゲンに映らない非特異的腰痛であることを示している。
院長
院長

【専門家コラム】「特異的」「非特異的」って、どういう意味?

少し難しく聞こえますよね。簡単に言うと、こう考えてください。

  • 特異的(Specific): 「特別な」「限定された」という意味です。つまり、「ヘルニア」という“特別な原因”に特定できる腰痛のことです。
  • 非特異的(Non-specific): 「特異的ではない」という意味。つまり、特定の病気に限定できず、筋肉や姿勢など、様々な要因が絡み合っている腰痛のことです。

決して「原因不明の不思議な痛み」という意味ではないので、安心してくださいね。

腰痛の2つのタイプを比較する天秤のイラスト。「明らかな異常」がある特異的腰痛と、「異常なし」と診断される非特異的腰痛の違いを示している。

腰痛の大多数(約85%)を占める「非特異的腰痛」

病院で「レントゲンを撮っても、骨に異常はありませんね」と言われた経験はありませんか?
もしそうなら、あなたの腰痛は、全体の約85%を占める、この「非特異的腰痛」である可能性が非常に高いです。

これは「原因不明」という意味ではありません。
「あなたの痛みの本当の原因は、骨ではなく、レントゲンには映らない、筋肉や関節、筋膜といった“軟部組織”にありますよ」
という、私たち手技の専門家が、最も得意とする領域への、スタートの合図なのです。

この記事のほとんどは、この「非特異的腰痛」の、本当の原因を探る旅になります。

なぜ、あなたの腰痛は“慢性化”してしまうのか?

この記事では腰痛の全体像を解説しました。しかし、なぜその痛みが長引いてしまうのか?そこには「ずっと痛い」「繰り返す」という2つの異なるパターンと、全く別の原因が隠されています。ご自身の痛みの“タイプ”を診断し、本当の根本原因を知りたい方は、こちらの専門記事をお読みください。
→  『【診断】あなたの慢性腰痛はどっち?“ずっと痛い” vs “繰り返す”』

残りの約15%、「特異的腰痛」とは?

一方、医師による画像検査で、原因が明確に特定できる腰痛を「特異的腰痛」と呼びます。椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、圧迫骨折などがこれにあたります。

【コラム】

ヘルニアと診断されても、痛みの主役は“交代”する

ここで非常に重要な事実があります。「特異的腰痛と診断された人でも、その痛みの全てが、ヘルニアだけが原因とは限らない」ということです。

人間の体は、痛みを感じると、その場所を守ろうとして、無意識に周りの筋肉をガチガチに固めます。つまり、特異的腰痛の患者様の多くは、「ヘルニアによる神経の痛み」に加えて、「痛みをかばうことで生じた、筋肉や筋膜の痛み」を、同時に抱えているのです。

私たち手技の専門家は、このレントゲンには映らない“二次的な痛み”を見つけ出し、解放するプロフェッショナルです。だからこそ、「手術しかない」と言われた痛みでも、劇的に症状が改善するケースが数多く存在するのです。

もし、あなたが「ヘルニア」と診断され、その痛みやしびれと、どう向き合えば良いか、さらに詳しく知りたい場合は、こちらの記事をお読みください。
「ヘルニアだから安静に」だけじゃない。

稀ではあるが確認すべき、危険な腰痛のサイン(レッドフラッグ)

ただし、ごく稀に、内臓の病気などが隠れている「危険な腰痛」の可能性があります。以下の症状が一つでも当てはまる場合は、タイプに関わらず、すぐに医療機関を受診してください。

「尿が出にくい、あるいは漏らしてしまう」

「じっとしていても痛みが楽にならない、むしろ悪化する」

「足に力が入らなくなってきた、感覚が麻痺している」

【ステップ2】なぜ、あなたの腰は“悲鳴”を上げるのか?― 体の“役割分担”が崩壊する時

あなたの腰痛の根本原因は、腰そのものではなく、体全体の「チームワークの崩壊」にあります。本来、それぞれの役割を持つべき関節や筋肉が、その仕事を放棄したり(サボり)、他人の仕事を肩代わりしたり(働きすぎ)することで、腰という“真面目な働き者”に、全ての負担が集中しているのです。

【原因の解明①】“サボる関節”と“働きすぎる腰” ― 隣接関節仮説という新常識

私たちの体は、「動くべき関節(モビリティ関節)」と「安定すべき関節(スタビリティ関節)」が、交互に並んでいます。

  • 足首(動く) → 膝(安定) → 股関節(動く) → 腰(安定) → 胸(動く)

腰痛に悩む人の多くは、本来“動く”べき股関節や胸椎が、デスクワークなどで固まってしまい(サボり)その動きを本来“安定”すべき腰椎が、無理やり肩代わりしている(働きすぎ)状態です。関節の設計思想に反したこの動きが、腰に微細なダメージを蓄積させます。

このような体の“チームワーク”の崩壊こそが、いわゆる『ぎっくり腰』の引き金となります。急な激痛への、具体的な対処法については、こちらの記事で詳しく解説しています。
→  なぜ、あなたのぎっくり腰は朝、起きるのか?―脳科学と運動力学で解き明かす、根本改善への最短ルート

【原因の解明②】具体的な“サボり筋”と“働きすぎ筋”

その関節の機能不全は、具体的な筋肉のアンバランスとして現れます。

  • サボり筋の代表例
    • 大殿筋(お尻): 弱くなると、体を支えるために腰を反らせてしまう。
    • 腹横筋(お腹のインナーマッスル): 天然のコルセットが緩み、腰が不安定になる。
  • 働きすぎ筋の代表例
    • 脊柱起立筋(背中): 常に腰を反らせる方向に緊張し、疲弊する。
    • 腰方形筋(腰の横): 骨盤を歪ませ、左右のバランスを崩す。

【原因の解明③】司令塔である“脳”の、采配ミス

なぜ、このような非効率な動きが、クセになってしまうのでしょうか?
それは、長年の習慣によって、あなたの「脳」が、間違った動きを「これが普通だ」と誤学習してしまっているからです。体の位置を感知するセンサー(固有受容器)からの情報が乱れ、脳は、腰に負担をかける運動指令を、無意識に送り続けているのです。

この「脳の誤学習」こそが、多くの慢性痛の根本原因となっています。なぜ私たちの脳は、体に負担をかける動きを「正しい」と勘違いしてしまうのか?その驚くべきメカニズムと、そこから抜け出すためのヒントについては、こちらの記事で詳しく解説しています。

→ 関連記事:『なぜ「痛い」のか、なぜ「硬い」のか。― その答えは、全て“脳”にあった。』

【ステップ3 解決への道すじ】あなたが本当にやるべきこと

自分の痛みのタイプと原因候補が見えてきたら、次はいよいよ解決への道すじです。

【重要】安静は、最良の薬ではないという真実

まず、多くの方が最初に考えるであろう「安静」についてお話しします。痛みが非常に強い急性期に、無理をせず体を休めることは、確かに必要です。

しかし、もしあなたが「安静こそが最良の薬だ」と信じ、痛みが少し和らいだ後も、過度に動きを恐れ、寝たきりのような生活を続けてしまうなら。その「長すぎる安静」こそが、あなたの回復を遅らせ、痛みを慢性化させてしまう、もう一つの原因になってしまうのです。

なぜ、安静にしすぎると、逆に回復が遅れてしまうのか?
その背景には、痛みに対する、私たちの体の、驚くべきメカニズムが隠されています。この、痛みの“本当の姿”については、私たちの図書館の、重要な専門書である『なぜ、あなたの痛みは治らないのか?― 最新研究で解き明かされる「痛みの、本当の姿」』で、詳しく解説しています。

私たちの仕事は、まず、あなたの体を「ゼロ」に戻すこと

長年の痛みを抱えたあなたの体は、いわば“マイナス”の状態です。まず、私たちの手技によって、その痛みの原因となっている筋肉の緊張や、関節の機能不全を解放し、あなたの体を、痛みのない「ゼロ」の状態へとリセットします。 これが、全ての始まりです。

そして、あなた自身が「プラス」を創り出す

しかし、私たちの仕事は、そこで終わりではありません。むしろ、そこからが本当のスタートです。
私たちが創り出した「ゼロ」の状態、つまり“動きやすい体”を、今度は、あなた自身が、日々の正しい運動やセルフケアを通じて、痛みを二度と繰り返さない、強くしなやかな「プラス」の状態へと、育てていくのです。

痛みのない体を取り戻すのは、私たちの仕事。
その先の、健康な体を維持し続けるのは、あなた自身の仕事です。

私たちは、そのための、最高のパートナーであり、水先案内人でありたいと考えています。

整形外科?接骨院?― 最初の相談相手として、私たちを選んでほしい理由

もしあなたが、腰痛でどこへ行くべきか迷っているなら、私たちは自信を持って言います。
「まず、あなたの街の信頼できる接骨院・整骨院に相談してください」と。

整形外科の先生方は、骨折やヘルニアといった「特異的腰痛」の診断と治療のスペシャリストです。
しかし、腰痛の85%を占める、レントゲンには映らない「非特異的腰痛」の根本原因を見つけ出し、手技によって、あなたの体を“ゼロ”へと導くこと。それこそが、私たち柔道整復師の、最も得意とする領域なのです。

なぜなら、私たち柔道整復師は、徒手検査や触診といった『手』による評価で、画像には映らない筋肉や筋膜、関節の微細な異常を見つけ出すプロフェッショナルだからです。

私たちに「診断権」はありませんが、あなたの痛みが、医師の診断を必要とする危険なものではないかを「判断」する、豊富な経験と知識があります。もし、その必要があれば、私たちは、責任を持って、あなたを適切な医療機関へと、お繋ぎします。

整形外科と接骨院の腰痛アプローチの違いを示す天秤のイラスト。骨や椎間板の問題を検出する整形外科と、軟部組織の問題を検出する接骨院の専門分野を比較している。

まず、私たちにご相談ください。
そこで全体像を把握し、必要であれば病院へ。そして、本当に必要なアプローチで、一緒に根本改善を目指す。
それこそが、あなたが遠回りをせず、後悔しないための、最も賢明な道すじです。

より詳しい情報へ ― あなたの“次の一歩”を、見つけるために

さらに、あなたの特定の状況やお悩みに合わせた、より深い情報もご用意しています。