【肩の脱臼】もし肩が外れたら? 専門家が教える「ゼロポジション整復法」と、絶対にやってはいけないこと

肩関節脱臼

スポーツや転倒の瞬間。
肩に走る激痛。そして「外れた」という直感的な恐怖。

多くの人が「すぐに整形外科へ」と考えます。
しかし、もしそれが休日や夜間だったら…?

この記事は、そんな“もしも”の最悪の瞬間のために、
私たち徒手整復プロフェッショナルである柔道整復師が、
あなたとあなたの大切な人を守るための、「もう一つの、そして最強の選択肢」についてお話しするものです。

【第1章】あなたの肩に、今、何が起きているのか?

【図解】肩関節の「弱点」

通常

肩関節前方脱臼

肩関節は、人体で最も広範囲に動く関節です。
しかし、その広い可動域と引き換えに、構造的に非常に不安定という弱点を抱えています。
上腕骨の先端(骨頭)が、肩甲骨の浅い受け皿(関節窩)に、浅くはまっているだけ。
例えるなら、小さなお皿に乗った、大きなボールのようなものです。

なぜ外れるのか? 最も多い「転倒」というメカニズム


「肩関節脱臼」の、そのほとんど(95%以上)は、前方に外れる「前方脱臼」です。

そして、その最も代表的な原因が、スポーツや、日常生活での、「転倒」です。

とっさに、後ろに、手をついた、その瞬間。
腕には、てこの原理で肩を前から押し出すような、強大な力がかかります。
これが「前方脱臼」を引き起こす最も典型的なメカニズムです。

【重要】“転倒”が引き起こす、さらなる「悲劇」

そして、ここで、一つ、非常に、重要なことを、覚えておいてください。

「転んで、手をつく」という、この、ありふれた動作は、脱臼だけでなく、「鎖骨骨折」や、「前腕骨の骨折」「肩鎖関節脱臼」といった、他の、深刻なケガの、引き金にも、なるのです。

だからこそ、スポーツや、遊びの中で、「受け身」を、練習しておくこと。それが、あらゆる、転倒による、ケガから、あなたと、あなたの大切な人を、守るための、最も、シンプルで、最も、効果的な「予防策」なのです。

【父としての、実体験】

実は、私自身の娘も数年前、Jボードでの転倒で「前腕骨」を骨折しました。その時の私の親としての無力感と、専門家としての初期対応の全てを、ここに記録しています。
→ 『Jボードの骨折事故から学ぶ、安全対策と、親としての反省』へ

【第2章】絶対にやってはいけないこと

NG行動① 自分で入れようとする

これは最も危険な行為です。
下手に入れると、骨や神経、血管をさらに傷つけてしまう可能性があります。
絶対にやめてください。

NG行動② 放置する

「そのうち治るだろう」と放置することも危険です。
関節が緩んだままになり、「反復性脱臼」というクセになってしまうリスクが高まります。


【“ゼロポジション整復法”の実際】― 専門家が行う、3つのステップ

では、具体的に「ゼロポジション整復法」は、どのように行われるのでしょうか。
力任せの乱暴な整復とは全く異なる、その安全で緻密なプロセスを、3つのステップで解説します。

タイムラインのタイトル
  • ステップ1
    準備 ― 全身の力を抜く

    まず、患者様にはベッドにリラックスして横になっていただきます。深呼吸を促し、肩周りの筋肉の過剰な緊張を解き放つことが、全ての始まりです。我々が一方的に力を加えるのではなく、患者様の体が、自ら治る準備を整えるのを待ちます。

  • ステップ2
    探索 ― “ゼロポジション”の特定

    ここからが、我々専門家の真骨頂です。
    患者様の腕を優しく支え、ミリ単位で、様々な角度へと、ゆっくりと動かしていきます。この時、頼りになるのは、長年の経験で培われた、指先の鋭敏な感覚です。

    私たちは、肩関節が最も安定し、周囲の筋肉が最もリラックスする、ただ一点の“最適解”である「ゼロポジション」を探し出しています。

  • ステップ3
    誘導 ― あるべき場所へ優しく導く

    ゼロポジションが見つかれば、もう力はほとんど必要ありません。
    最小限の力で、外れた骨頭を、あるべき関節の受け皿へと、「カクン」と、驚くほど穏やかに誘導します。
    多くの患者様が、痛みを感じる間もなく、整復が完了したことに驚かれます。

    これこそが、科学的な知識と、繊細な職人技が融合した、体に優しい技術なのです。

専門家メモ

「ゼロポジション」の科学的根拠とは?

私たちが探している「ゼロポジション」とは、単なる感覚的なものではなく、明確な科学的根拠に基づいています。

それは、解剖学的に「肩甲骨の肩甲棘と、上腕骨の長軸が、一直線上に並ぶ肢位」と定義されており、この特定の角度において、以下の3つの力学的・解剖学的な“最適化”が同時に起こります。

  1. 筋肉の中立性
    肩を動かす主要な筋肉群(三角筋、回旋筋腱板など)の緊張が、最も均等になり、リラックスした状態になります。
  2. 関節の安定性
    関節を包む関節包や靭帯のねじれが最も少なくなり、骨頭が受け皿に最も安定して収まります。
  3. 骨の無干渉
    骨同士の衝突(インピンジメント)のリスクが、構造的に最も低くなります。

私たちの手技は、この3つの条件が全て満たされる一点を探り出し、そこに優しく関節を導く、極めて論理的なプロセスなのです。


【第4章】「整形外科」と「信頼できる“本物の”接骨院」。あなたの賢い“使い分け”

なぜ、私たちは「徒手整復のプロ」なのか

整形外科医の先生方はもちろん素晴らしい専門家です。
しかし、私たち柔道整復師は、日々の臨床のほとんどの時間を、薬やメスではなく、「自らの手」だけを頼りに、患者様の骨や関節と向き合っています。
その圧倒的な「触診」と「徒手」の経験値こそが、私たちの最大の誇りです。

【専門家の視点】

【最重要】ただし、「誰でもいい」わけでは断じてない

しかし、ここで一つ非常に重要なことをお話ししなければなりません。

正直に言うと全ての柔道整復師が、最新のそして最も体に優しい整復法をマスターしているわけではありません。

私が学生時代に最初に習ったのも「コッヘル法」という、患者様に大きな負担をかけてしまう可能性のある古い整復法でした。

そこから日々学び続け、技術をアップデートし続けている本当に信頼できる先生かどうか。それをあなた自身が見極める必要があります。

“もしも”の時、本当にあなたを救うのは誰か

ここで一つの厳しい「現実」についてお話しします。

肩の脱臼や、子どもの肘内障といった緊急性の高いケガはなぜか、休日や夜間に起こることが非常に多いのです。

もちろん救急病院に行けば、当直の先生が診てくれます。
しかし、その先生は必ずしも骨や関節の専門医ではないかもしれません。

不慣れな整復で、痛い思いをしたりするかもしれません。
あるいは、「専門の先生が来る月曜日まで、このまま様子を見てください」と、言われてしまったり。

だからこそ「かかりつけ接骨院」というお守りを

そんな、不安な夜を、あなたは、耐えられますか?

だからこそ、私たちはこう提案します。

“もしも”が起きてから、慌てて探すのでは遅いのです。

平日の元気な時にこそ、あなたの街のいくつかの接骨院を訪れてみてください。
先生と実際に言葉を交わし、「この先生なら任せられる」と心から思える、あなただけの「かかりつけ接骨院」を見つけておくこと。

本当に信頼できる先生は、きっとあなたのその“もしも”の夜に「なんとかしましょう」と、手を差し伸べてくれるはずです。

それが、あなたとあなたの大切な家族の不安な夜を救う最高の「お守り」になるはずです。

【補足】子どもの代表的な脱臼「肘内障」について

ちなみに、脱臼の中でも特に小さなお子様に頻繁に起きるのが「肘内障(ちゅうないしょう)」です。
これもまた、私たち柔道整復師が最も得意とする分野の一つです。

→ 【より詳しく】『【子どもの肘内障・予防が全て】腕を引っ張る前に…』へ


【結論】正しい知識が、あなたの「未来」を守る

突然のつらい肩の脱臼。
しかし、正しい知識を持ち信頼できる専門家を知っておけば何も怖がることはありません。
この記事があなたの「もしも」の時のお守りとなれば幸いです。


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