
「膝が痛いのに、なぜ、股関節を触るのですか?」
これは、私たちが、日々の臨床で、患者様から、最もよく頂く質問の一つです。
その答えこそが、私たちの治療の“全て”であり、あなたが、長年の痛みから解放されるための、最も重要な“鍵”となります。
この記事は、その“鍵”である、運動連鎖(キネティックチェーン)という、人体の、最も根源的な“法則”について解説する、当院の“治療哲学の教科書”です。
キネティックチェーンの“3つの法則”とは ― 全ての不調を、繋ぐ“鎖”
我々の体は、足の指先から、頭のてっぺんまで、一つとして、独立したパーツは存在しません。全ては、骨、関節、筋肉、筋膜によって、シームレスに繋がった、一本の“鎖(チェーン)”です。
- 法則① 人体は、“鎖”である
- 法則② 鎖には、“役割分担”がある
- 法則③ 全ての“痛み”は、“役割の崩壊”から生まれる
法則① 人体は、“鎖”である
我々の体は、足の指先から、頭のてっぺんまで、一つとして、独立したパーツは存在しません。
全ては、骨、関節、筋肉、筋膜によって、シームレスに繋がった、一本の“鎖(チェーン)”です。
そして、この鎖の一部分で起きた、ほんの僅かな“錆びつき”や“ねじれ”は、必ず、鎖全体へと、波及していきます。
これが、キネティックチェーン(運動連鎖)という、我々が、人体を捉える上での、最も基本的な、そして、最も重要な、大原則です。
法則② 鎖には、“役割分担”がある
そして、この“鎖”を構成する、一つ一つの“環(関節)”には、それぞれ、生まれながらにして与えられた、明確な“役割”が存在します。
それは、「安定性(スタビリティ)」と「可動性(モビリティ)」という、2つの、全く異なる役割です。
そして、人体は、この異なる役割を持つ関節が、交互に、美しく並ぶように、設計されています。

- 足関節可動性(モビリティ)
あらゆる方向に、しなやかに動き、地面からの衝撃を、最初に吸収する。
- 膝関節安定性(スタビリティ)
主に、前後の曲げ伸ばしに特化し、横方向や、ねじれの動きに対しては、安定を保つ。
- 股関節可動性(モビリティ)
体の中で、最も大きな可動域を持ち、歩行や走行の、主要なエンジンとなる。
- 腰椎・骨盤帯安定性(スタビリティ)
上半身の重みを、どっしりと支え、体幹の、ブレない“土台”となる。
- 胸椎可動性(モビリティ)
体を“ひねる”という、回旋運動の中心となり、腕の動きを、自由にする。
法則③ 全ての“痛み”は、“役割の崩壊”から生まれる
では、なぜ、痛みは生まれるのか?
その答えは、極めてシンプルです。
本来、動くべき関節が“サボり”始め、
その“しわ寄せ”を、
本来、安定すべき関節が、
無理やり“肩代わり”しようとした時。
そこに、過剰なストレスが集中し、組織の微細な損傷が蓄積し、我々が「痛み」と認識する、“SOS信号”が、発せられるのです。
足首(動くべき)が、硬くて“サボる”
→ 膝(安定すべき)が、グラグラと“働きすぎる”
→ 結果はランナー膝、変形性膝関節症
股関節(動くべき)が、硬くて“サボる”
→ 腰(安定すべき)が、グニャグニャと“働きすぎる”
→ 結果は腰椎椎間板ヘルニア、ぎっくり腰
胸椎(動くべき)が、丸まって“サボる”
→ 肩甲骨や首(安定すべき)が、“働きすぎる”
→ 結果は肩こり、首の痛み、頭痛
【実践編】あなたの不調は、どこから来たのか? ― 2つの“崩壊”パターン
我々の「図書館」には、この“役割の崩壊”が、具体的に、どのような症状として現れるのかを解説した、数多くの専門書が、収蔵されています。
あなたの不調の“根本原因”が、どこにあるのか。以下の書架から、探検を始めてみてください。
【パターン①】“土台”の崩壊 ― 「扁平足」から始まる、全身への歪み
あなたの不調の“震源地”は、もしかしたら、**足元**にあるかもしれません。<br>「扁平足(過剰回内)」に代表される、足元の“土台”の崩れが、まるで、地震のように、下から上へと、全身の歪みを、引き起こしていくパターンです。膝の痛み、股関節の詰まり、そして、その結果としての、腰痛や、猫背に、繋がっていきます。
- 『【膝の教科書】膝痛の根本原因は、膝と“全身の連動性”にある』
- (今後作成予定)『【足関節の教科書】なぜ、全ての不調は“足元の崩れ”から始まるのか?』
【パターン②】“中枢”の崩壊 ― 「猫背」から始まる、全身への不調
あるいは、あなたの不調の“震源地”は、体の“幹”にあるかもしれません。
長時間のデスクワークなどで、体の“幹”である、骨盤や胸郭の機能が、先に、失われるパターンです。肩こり、頭痛、腕のしびれ、そして、反り腰や、フラットバックといった、様々な不調の、直接的な原因となります。
- 『【猫背改善ガイド】あなたの不調、全ての“黒幕”は「猫背」だった?』
- (今後作成予定)『【肩甲骨の教科書】その肩こり、本当の原因は“動かない肩甲骨”にあり』
【複合型】“全身”の崩壊が、腰に集中する
そして、最も多くの人々を悩ませる「腰痛」は、これらの“トップダウン”と“ボトムアップ”の問題が、複雑に絡み合った、まさに“全身の悲鳴”なのです。
結論 我々は、“症状”ではなく、“あなたというシステム”を、見る
我々の治療は、痛む場所だけを追いかける、対症療法ではありません。
あなたの体の、どこで、どのような“役割の崩壊”が起きているのか、その根本原因を見抜き、あなたという、複雑で、美しい“システム”全体を、再び、正常に機能する状態へと、再起動(リブート)させること。
それこそが、キネティックチェーン(運動連鎖)の思想に基づいた、私たちの治療哲学の、全てです。
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